おボク様 あなざぁ 『∞ バッドエンドは男の花道』

 進学してアパートで一人住まいを始めてから一月以上が過ぎた。僕は鏑木瑞穂という本
来の自分の名前にも、本来の男としての生活にも慣れた。一番戸惑ったのは、すぐ近くに
いた大切な人と離れたこと。まあ、家庭教師のバイトを始めて買った携帯を奏に渡して、
毎日のように話してはいるんだけど、それでも一つ屋根の下にいた時とは違う。なるべく
週末には会うようにしているのだけど、必ずデートできるわけでもなくて。
「考えてみたら、今日は僕の誕生日なのに……」
 部屋にいるのは僕一人だけ。
「来年は知り合いのレストランでも予約して二人で食事でもしようかな……」
 最近は独り言も板についてきた。実はコンビニ率とインスタント食品率も向上している。
今日ぐらいは何か作るかと外に出ようとした時に彼女が来た。
「瑞穂さま、突然すいません」
 いくつか袋を手にした制服姿の奏が、そう言ってはにかんだような笑みを浮かべる。も
しかして、誕生日だから来てくれたの?!
「今日はお願いがあって来たのです」
 お願い?
「はい、生徒会の菅原君江さんがエルダー候補になっているので、お姉さまに推薦文を書
いて欲しいと言う声が一杯あるのですよ〜」
「君江さんがエルダーに? 確かに眼鏡はずして髪を下ろしたりしてると綺麗だし……」
 一瞬、奏ちゃんの目の色が変わった気がして、言い淀む。
「何より真面目で熱心だから向いているんじゃないかな、ははは」
 奏はうなずいた。
「出来れば今日中に書いて欲しいのです。今日は泊まれませんけど、出来るまで奏は瑞穂
さまのお食事の用意をしてますから」
 そう言って、エプロンを出す。一瞬、裸エプロンを想像する。そうか頭にリボンをつけ
てプレゼントは私ですって……
「瑞穂さま?」
 不思議そうに僕を見上げる奏。僕は頭を振って思考を元に戻す。
「ごめん、それじゃ急いで書くから」

 しばらくして、奏がお茶を淹れてくれる。当然エプロンは制服の上に着けている。まあ、
それも可愛い。
「瑞穂さま、出来そうですか?」
「うん、もうすぐ。はい、書き終わった。今プリントするから」
 早めに終わった分、奏と一緒に早めに食事して…それから……
 印刷された文章に目を通す奏をそっと抱きしめようとして伸ばした手は空を掴かんだ。
「それでは奏はもう行きます。ポトフはもう少し煮込めば大丈夫で、また週末ご連絡する
のですよ〜」
 そう言って奏は走っていってしまう。何だったんだろう……まあ、何も無い誕生日より
は、料理を作ってくれる世話焼きさんの彼女がいるのは良かったんだろうと僕は思った。
なんかゲームで選択肢を間違えて、バッドエンド迎えた気分だけど、次はがんばろう。今
日は寂しいけど。
 僕の誕生日は、こうして一人寂しいポトフ記念日になったのでした。

 一方。
「ありがとう奏ちゃん。これで君江さんも嫌とは言えなくなるよね。早速、見せてくる。
瑞穂お姉さまの誕生日に変なこと頼んでごめんね」
「あら?! 奏、忘れてましたのですよ〜」

  終了
 以上、忘れててあわてて書いてみるテスト

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