(´-`).。oO(瑞穂ちゃんの災難2−2です。奏と由佳里は朝食の時に誤解をしていたことを瑞穂に謝りました)


瑞穂ちゃんの災難2−2


 翌日。1限目と2限目の休憩時間。
「失礼いたします。生徒会の菅原と申しますが、宮小路瑞穂さまにお取り次ぎいただけませんでしょう
か?」
(あれ、君枝さんか)
「お待ちになって‥‥‥‥宮小路さんね」
瑞穂のそばに来ると「瑞穂さん。君枝さんがお越しよ」瑞穂は、美智子に軽く頭を下げると廊下にいる
君枝のところに歩いていき
「君枝さんが、いらっしゃると言うこと言うことは‥‥‥‥」
「はい。おねえさまに、ぜひ、お伝えしたいことがあるそうですので、私が使者になりました」
君枝の言い方に内密の話だろうと感じた瑞穂は、軽く膝を折り君枝の口元に耳を近づけると
「一部強硬派の教師により不当な処罰を防止するために、生徒会としても対応策を講じる必要があり、
おねえさまから直接お話を伺いたいそうです。出来れば、客観的な証拠として主張できる物を持参して
いただきたいとのことです」
君枝の耳元で瑞穂が何事かささやくと、顔を薄紅に染めながら
「はい。必ず会長にお伝えいたします。私は、教室移動中ですのでこれにて失礼いたします」
君枝は、軽く頭を下げると足早にその場を去っていった。
(ふうーーー、すっかりおおごとになってきたな)
席に戻ってくると美智子が"わかってますよ"という表情をして「やはり、うわさの件ですの?」と、
瑞穂にだけ聞こえるように問いかけてくる。
「ええ。貴子さんも立場上しかたなくみたいですね。生徒会側から何か言ってくるのは予測の範囲では
あったのですが、私の思っていたより動きが速いのですから‥‥‥‥‥‥美智子さん。後日お力をお借
りするかも知れませんが?」
「それは、受付嬢としてでしょうか?」
「まあ、状況によりますけど」
瑞穂は、話はここまでという意思表示のつもりで2限目の教科書を机の上に置き始めた。
(貴子さんにまで迷惑掛けるわけにはいかないな。しかたがない今日にでも、まりやに買いにいかせるか)
「瑞穂さん」紫苑の咎めるような言い方に、肩をすくめて
(いずれは、紫苑さんに御願いするつもりだったから、まあいいか)
「お昼休みにまりやをつれて屋上に来て頂けますか?但し、私が呼んでいるとは言わずに御願いします」

「はい」
にっこり笑って返事をすると、紫苑も授業の準備を始めた。
 昼休みの屋上。
「瑞穂さん。お約束通りまりやさんをお連れいたしましたわ」
「紫苑さま」
紫苑の弾んだような声と、まりやの紫苑を咎めるような声を耳にした瑞穂は、いきなり本題を切り出した。
「まりや。今日行ってくれるよね?」
「あら?お買い物ですの?まりやさんに頼まれると言うことは、女性ものですわね?」
「あの紫苑さん。もしかして楽しんでませんか?『私。興味ありましてよ』とお顔に書いてあるのです
が?」
瑞穂の力のない問いかけに紫苑はすました顔で
「お買い物は、女性の楽しみの1つですもの。どのようなものをお買いになるのか、興味が無いと言えば
嘘になりますわ」
「紫苑さま。瑞穂ちゃんのうわさはご存じですよね?」
紫苑は納得がいったとばかりに胸の前で両手を合わせて
「ああ、それで、君枝さんがお見えになったのですね」
 瑞穂は、時折吹く強い風に髪の毛を揺らしながら、哀しく見えるだろう表情を作り、力のない声を出し
「ええ、すべてはまりやから始まりましたから、責任の1つも取っていただきませんとね。私は、もっ
と《穏やかで、平穏な》生活を望んでいたのですが、それを《ことごとく》まりやに破壊されましたから」
紫苑も同意するように、表情を曇らせながら声のトーンを落として
「そうですわね。まりやさんが、瑞穂さんを"エルダー"に就任させようと画策なさらなければ、ここま
で、大きな騒ぎには‥‥‥‥」
「だから、買わないとは一言もいってないでしょ。私だって勇気がいるんだって‥‥‥まだ、そう言う
こともしてないのに‥‥‥なにが哀しくて買いに行かないといけないのよ」
逆ギレ気味に話すまりやに
「でしたら、私もお伴いたしますわ。少し興味がありますから‥‥‥その、私もそういうことは経験無
いのですが、将来のためにどういうお店で販売されているのか、知識として覚えておいて損はないと思
いまして」
紫苑は色白の顔をごく薄い紅色に染めて同行を申し出るが、当惑した瑞穂は
「と、いいましても、近くでは買いづらいので、隣の街に買いに行く予定なのですが‥‥‥制服姿とい
うわけにもいきませんし、私とまりやは、寮なので着替えは問題ないのですが、紫苑さんは‥‥‥‥」

理由を連ねて遠回しに断ろうとするが
「でしたら、明日にいたしませんか?明日でしたら、私も着替えを用意できますので問題ありません
わね?」
瑞穂とまりやは、顔を見合わせると
「あのーーーー紫苑さま。もしかして?」
「はい。仲間はずれはいやですわ」
(あーーー。紫苑さん。楽しんでる。絶対楽しんでる)
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(あくまの笑顔ですって)
きれいな笑顔の紫苑、落ち込んでいる瑞穂の姿。まりやは長いため息を吐くと
(あーーーー。他の人が見たら絶対誤解するって、現エルダーと、元エルダーが妖しい関係だと誤解す
るって‥‥‥‥そうなったら、また瑞穂ちゃんが切れる。紫苑さーーーーま。もう、こうなったら、毒
を食らわば皿までってことになるのかな)
紫苑が、瑞穂の後ろから手を伸ばして胸バッドの感触を楽しんでいるのを見て
「紫苑さま。授業後まで、瑞穂ちゃんの胸を触るのは我慢してください」
「まりやーーーーー」
(あーーーーん。もう)
紫苑が、幸せそうな顔をして瑞穂の胸バッドをさわり続けているのを見て
「紫苑さま。私の身の安全のためにも、校舎内では誤解を招くような事は謹んでください」
まりやの嘆願とも取れる言葉をかわして
「あら、女子校ならでは、コミュニケーションですのに‥‥‥‥」
紫苑は寂しそうに呟くと、一つ手を叩き

「では、瑞穂さんのお部屋でなら、他の人の目を気にせずに触れそうですわね」
(あーー。違う。なにかが違う。絶対違うって)
すっかり疲れ果てた瑞穂は
「まりや。このさいだから紫苑さんも連れて行こう。とりあえず、寮の部屋で着れそうな服を探して
だめなら、紫苑さんに持ってきて頂いて、私の部屋で預かればいいから」
「そうね。私もそう思う。騒動を楽しむのは好きだけど、騒動に巻き込まれるのは遠慮したいって、
実感したわ」
まりやも疲れ果てたように呟いた。

 2日後。放課後の生徒会室。
「おねえさま。会長職に就く者として、校内風紀の監督権限を与えられている以上、ここ数日来、学院
内で流れている風聞の真偽につきまして、お伺いしたいことがあります」
入ってきた瑞穂に、貴子は堅い口調でこう話を切り出した。
 貴子の問いかけに、瑞穂は事の発端となったであろうことから順を追って話していくと、貴子はもち
ろん、同席していた他の役員たちも、事の真相を聞いて唖然とするしかなかった。
「つまり、おねえさまが、お食事中に"げっぷ"などという不作法を隠すために、口元を隠して食堂から
退出されたのが、事の発端なのですね。さらに、寝不足気味で顔色も優れなかったのが、誤解を招きや
すくなったといわれるのですか‥‥‥‥‥」
貴子の要約に、瑞穂は申し訳なさそうにうなづき
「私の方から今回の件につきましてお話する予定を立てておりましたが、貴子さんの方からお声が掛か
りましたので‥‥‥‥‥‥‥‥私も、このように大きくなるとは思ってもおりませんでした」
長く息を吐いた後、気を取り直したように
「証拠の提示をとの事ですので」
きんちゃく袋の内から、未開封の検査薬の入った箱。一人分のコーヒーがセットされた未開封の紙コッ
プを取り出し
「未使用な物を持参してまいりました。紙コップだけが必要なのですが、密封してある物がいいかと思
いまして」
貴子が手に取り箱に書かれている「妊娠検査薬」の文字を声に出して読む。君枝をはじめ役員が順に手
に取り最後に瑞穂の元に戻ってくると、箱の封を切り体温計ケースに似た形の物を取り出して、準備を
始める。

「おねえさま。私たちの目の前で行われるのですか?」
驚きに目を見開いて問いかけてきた貴子に
「ええ、さすがにここでの採尿は致しませんが、判定手順は皆さんの前で行いたいと‥‥‥」
「た、確かに、私たちの目の前で行って頂ければ、問題はありませんが‥‥‥」
言い淀む貴子を諭すように瑞穂は
「学院の品位に傷が付くことを防ぐ手段があるのでしたら、躊躇わずににおこなうべきでしょう。"エ
ルダー"であるなら、なおのこと学院の品位を汚さない努力を惜しむべきでは無いかと思います。貴子
さん?」
「確かに、おねえさまのおっしゃるとおりなのですが‥‥‥‥」
いまひとつ、決断しきれない貴子の正面に立つと慈愛に満ちた笑みを浮かべて
「学院に学ぶ700人からの妹たちに外で恥ずかしい思いさせない方が、より重要なのではありません
か?」
貴子を始め生徒会役員たちは、瑞穂の言葉を反芻しながらも、そこまでさせるべきなのか‥‥‥‥
自分が同じ立場に立ったときここまで出来るのか思いながら、お互いの顔を見ては、そっと息を漏らし
ていた。しばらく沈黙が続いた後
「おねえさま。で‥‥‥では、おねえさまからの"強い"要請で行ったという形にさせていただきます」
意を決して貴子はそう告げた。その後、行われた判定では"陰性"という結果が現れた。
(最初から、陰性の結果しか出てこないのは間違いなんだけど。貴子さんの立場とか考えるとね)
 貴子はしばらく考えていたが、自分の生徒手帳を取り出しページをめくって目的の文章を探し出して
再度読み直すと、その場にいた全員に向かって
「生徒会会則の付則第3項。つまり、生徒会側の処分に納得できないから異議申し立てを出来るのを利
用しまして、1月の臨時総会の開催を出来るようにもっていきます。その席で、おねえさまの名誉を必
ず回復させて頂きます」
「《ノブレス‥オブリージュ》この言葉の意味は、貴子さんならご存じですわね?」
突然の、しかも一見関係なさそうな瑞穂の問いかけに、記憶を思い出しながら
「確か、高貴な身分に伴う規範的義務でしたとおもいますが?」

瑞穂は、形の良い指を貴子の下顎に当てて、顔を上げさせると
「先ほども申しましたけど、私は、エルダーとして信任されました。ですから、エルダーとしての義務
の一つと考えることにしました。元はと言えば、私が紛らわしい行為を行ったわけですから‥‥‥‥」
「それでしたら、私も生徒会長として、責務を果たさせていただきます。先ほども申し上げましたが、
明日にでも、おねえさまを処分させて頂きます。その後、どなたかに御願いして異議申し立てを行って
ください。出来ましたら、処分撤回の署名簿を後日提出して頂けますと生徒会としましても、教師側に
開催理由を強く主張できますので」
「では、私は私の責務を‥‥‥‥」
と、瑞穂が言うと、貴子が続けるように
「‥‥‥‥生徒会は生徒会の責務を果たすことに致しましょう。おねえさまと700人からの生徒たち
の名誉のために」
瑞穂は、貴子の額に唇を当てると
「《もし盲人が盲人の手引きをするなら、二人とも溝に落ちるだろう》[聖書マタイ伝15−14]
聖書の一節を引用させて頂きました」
貴子は、文化祭の時のことを思い出して、首筋まで紅く染め上げると瑞穂の腕の中に倒れ込んでしまった。

次回に続きます。

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