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『バレンタインDay アナザーエピソード
 2月15日のバレンタイン』 by 「8-824」氏

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「結局渡せなかったなぁ・・・」
 私は自分の部屋の机に置いてあるチョコレートを見ながらぼやいた。
 このチョコレートは、学園のエルダーである瑞穂お姉さまに渡そうと思っていたものだ。
「仕方・・・ないよね・・・」
 昨日、何度も渡そうと試みた。でも、お姉さまの人気は想像以上に凄く近づくことさえ出来なかった。一番下の学年で内気な私には直接渡すなんてできない。だから下駄箱に入れようとと思ったのだけれども・・・
「みんな考えることは一緒だよね・・・」
 私が行ったときには、下駄箱もお姉さまの机もすでにチョコで埋まっていた。
「どうしよっか・・・このチョコ」
 2日前に胸を高鳴らせながら作ったチョコレート――
「そういえば奏ちゃん・・・」
 同じクラスの奏ちゃんは確かお姉さまと同じ寮に住んでいるはずだ。
「奏ちゃんに渡してもらえばいい・・・か」

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今日は途中から雨が降り始めた。
「傘もって来てないや・・・」
どうにもついていない。 私は雨の日が嫌いだった。
(まるで私の気分みたい・・・)

お昼休み――
 私は奏ちゃんに声を掛けた。
「あ、あの奏ちゃん?」
「どうしたのですか〜?」
「今日もお昼は、お姉さまたちと御一緒するの?」
「そうなのですよ〜奏は毎日お昼が楽しみなのですよ〜」
「あ、あのこれお姉さまに渡して欲しいのですけど・・・」
「これは、チョコですか?」
「ええ。昨日渡しそびれてしまって」
 私は昨日の事を話した。
 それをきいた奏ちゃんは『確かに大変だったのですよ〜』と言ったはものの、
 なにやら考えている。

(だめ・・・なんて言わないわよね)
 まさか奏ちゃんに断られることなどまったく考えていなかった。
「そうだ。奏と一緒に来るですよ〜」
「え!え、ちょっと奏ちゃん!!」

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(なんで私はここにいるの・・・?)
 奏ちゃんが連れてきたのは食堂だった。しかも、目の前にはお姉さまが優雅な立ち振る舞いで座っていた。
「あら奏ちゃん、お友達?」
「そうなのですよ〜。お姉さまに渡したいものがあるのですよ〜」
 参った。すっかり奏ちゃんに橋渡しされてしまった。ここまで来たらやるしかない。
「あ、あの!これチョコなんですけど・・・きのう渡しそびれてしまって」
 私は涙が出そうになっていた。ほんとは気づいていたのに・・・渡しそびれたのではないのだ。
 ただ、自分が後一歩、踏み込めなかっただけ・・・ほんの少しの勇気を私は持てなかった。
(なんて弱いんだろう私・・・自分の勇気のなさを周囲のせいにして・・・)
 その時、お姉さまが優しく微笑んだ。
「ありがとう― 大切に頂きますわ」
「お姉さま・・・」
「ふふ。あなた今日は食堂かしら?私たちと一緒にお昼にしません?」
「あ、いえ!!今日はお弁当なので・・・あ、あのその、誘ってくれてありがとうございます!
 で、では私はこれで!!」
 私は、駆け出した。胸の動悸が止まらない。
(あんな、お方がいるなんて・・・)
 自分とさほど年は変わらないはずなのに!私は自分のことだけで精一杯なのに!
(それなのに・・・どうすればあんなふうに他人を気遣えるようになるの?)

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「あ、あの!これチョコなんですけど――」
 その姿を見て思った。
(ほんとは勇気が出せなかっただけなんですよ〜)
 その気持ちは痛いほどわかった。 なぜなら自分もそうだったから・・・

 お姉さまに出会って、奏は勇気をもらった。
 お姉さまは奏の力だよって言ってくれたけど、たとえそうだとしても迷ってる奏の背中をそっと押してくれたのはお姉さまだった。
(がんばって―)
 だからきっと、お姉さまなら、勇気を与えてあげられるんじゃないかと思って、ここまで引っ張ってきたのだ。
「ありがとう― 大切に頂きますわ」
 お姉さまが、気持ちに応えた。とても優しい笑み。自分を包み込んでしまうような・・・
 また見たいと、いつも笑顔でいて欲しいと思わせるような・・・
(やっぱり奏たちのお姉さまは、最高のお姉さまなのですよ〜)

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(あれ?この子は・・・)
 僕はなんとなく今日、奏ちゃんが連れてきた子に見覚えがあった。
(あ、きのう何度か見かけた子か・・・)
 昨日、僕がチョコレート責めにあっている時に確か玄関と教室で姿を見た記憶がある。
(そっか、チョコを渡そうとしてくれてたんだ・・・)
 その気持ちが僕には素直に嬉しくて、顔に出てのかもしれない。自然に笑顔がこぼれた。
「ありがとう― 大切に頂きますわ」
 そう言うと彼女は、真っ赤になって俯いてしまった。
 ふふふ。だいぶ僕もこういうのが板についてきたのかもしれない。
 それはそれでまずいような気がするけれど―でも、こうやってきれいな想いに触れられる自分も最近好きになってきた。

 その後、僕としては一緒に食事を取りたかったのだけれど、どうやらきょうはお弁当だったらしく彼女は行ってしまった。


(あ、そうか・・・メッセージカード・・・渡さなきゃいけないな)
 僕は放課後にカードを買いに行くことに決めた。

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「お姉さま・・・」
 口から自然と言葉が漏れた。
 放課後になっていた。雨はやむ気配はない。私は玄関でただ空を見上げていた。

「あら、あなたは・・・」
 後ろから声が掛かった。
「お!お姉さま!?」
「お迎えを待っているのかしら?」
 私を気に掛けてくれているんだ・・・
「い、いえ・・・すみません傘を忘れてしまって・・・」
「そうなの・・・あなたお家はどこ?」
「え、あの――・・・です」
「あら、私たちの寮の近くね。ふふ。なら私と一緒に帰りましょうか?」
(え・・・?)
「相合傘っていうのかしらね・・・ふふ」
「あ、あの・・・よろしんですか?」
「女の子同士でしょう?」
「あ!ありがとうございます!!」

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 初めて会ったのは通学路だった。お姉さまを中心にして楽しそうに笑う4人組を見たのは。
 入学したばかりであまり友達がいなかったわたしは、羨ましくて・・・あの中にはいれたらと思っていた。

「でも・・・」
 でもいまは違う。ううん違うと言える。お姉さまの優しさに触れて私は勇気を貰ったんだ。


 あしたは、クラスの皆にも積極的に話しかけてみよう

 私のバレンタインは1日遅かったけど・・・今日から私は前に踏み出そうと思う

 雨もたまには悪くないかもね・・・

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#疲れたぁ〜チョコ頂戴w

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