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『真夏日』 by 「Qoo」氏

第1話「麦茶」
第2話「何食べよ」
第2.8話「sultry and sultry girls」
第3話「in the cafe」
第4話「閑話」
第5話「次の目的地」
第6話「sultry and sultry girls. returns - code name:O・T・L -」
第7話「in the sweets world」
第7.5話「甘少女」
最終話「帰り道」

 

   第1話 「麦茶」


まりや「熱い、熱いよ〜!」
 僕と奏ちゃんが食堂でアイスティーを飲みながらくつろいでいると、
 まりやが喘ぎながら食堂へと入ってきた。
瑞穂「まりや、字、間違ってるよ」
まりや「合ってるってば。熱いのよ私は!麦茶〜」
 まりやは冷蔵庫を開け、おもむろに麦茶の入っているポットの蓋を開けると、
 あろうことか直接ポットに口を付けて麦茶を飲み始めた。

瑞穂「ああっ、まりや!何してるの!」
 僕が慌ててたしなめるが、気にする風も無くゴクゴクと麦茶を飲むまりや。
 半透明のプラスチックポットの中身が、見る見る内に減っていく。
 中身が半分以上減った辺りで、麦茶のポットを "どんっ!" と勢いよく置くと、
まりや「ぷは〜、美味い!」
 と口を拭う。
瑞穂「まりや、ビールじゃないんだから…、っていうか口付けて飲まないでよ。はしたない」
まりや「うるさいわね。喉が渇いて死にそうだったのよ。それに瑞穂ちゃん、次にコレ飲めばあたしと間接キッス出来るよ(笑)」
瑞穂「な、何言ってるのよ。後、早く冷蔵庫閉めてよ。中が温まっちゃうじゃない」
まりや「いや〜、中の冷気が涼しくて気持ちいいのよ〜。瑞穂ちゃんも涼む?」
瑞穂「涼みません。電気代勿体無いでしょ」
まりや「も〜。細かいところで貧乏性なんだから瑞穂ちゃんは…」
 まりやは渋々ポットを冷蔵庫に収め、扉を閉めた。

奏「でも奏、まりやお姉さまの気持ち、少し分かるのですよ。氷を取り出すときに冷凍庫の扉を開けると、ひんやりした風が凄く気持ちがいいのです」
まりや「そうよね〜。さっすが奏ちゃん。思わず冷凍庫の中に顔を入れたりとか、無駄に冷凍庫の扉を開閉したりしちゃうよね〜」
奏「あ…、いえ、奏、そこまではしないのですよ…」
 さすがに苦笑いを浮かべる奏ちゃん。
瑞穂「まりや、そんなことしてたの?」
まりや「か、奏ちゃん、裏切り者…」

瑞穂「もう…まりやったら。でも、確かに今日は暑いわね」
 一応寮内には軽いセントラルエアコンディショナーが利いているはずなのだが、
 気温が高いせいかあまりその恩恵を感じられず、蒸し暑い。
奏「はいなのです。今日は夏一番の真夏日ってテレビで言ってたのですよ」
まりや「何かそれ聞くと、もっと暑くなる気がするわね」
 そう言って奏ちゃんを恨みがましい目で見つめるまりや。
奏「き、気温が高いのは奏のせいじゃないのですよ〜」
瑞穂「まりやったら。奏ちゃんを苛めないで頂戴。そんなに暑いのなら、図書館にでも行ってきたらどう?クーラーが利いててきっと涼しいわよ」
まりや「あんなところに居たら騒げないじゃない」
瑞穂「当たり前じゃない。たまには静かに勉強するのもいいんじゃないかしら」
まりや「あたしに死ねというのか瑞穂ちゃん」
瑞穂「勉強するくらいで死ぬ人がどこにいるの」
まりや「ここに居るよ?」
 事も無げに言うまりや。
瑞穂「……」
奏「……」

 瑞穂・奏「………」

まりや「何なんじゃその沈黙は〜〜〜!!」
 突然テーブルをひっくり返して暴れるまりや。
 僕と奏ちゃんは条件反射でティーカップを非難させる。
瑞穂「支離滅裂なこと言ってるのは自分じゃない!」
まりや「うるさ〜〜〜〜〜い!むき〜〜〜〜〜!!」
  ガシャンガシャーン
奏「(泣)」
  
     ─────

まりや「はぁ…はぁ…はぁ…」
瑞穂「はぁ。落ち着いた?まりや」
 多少落ち着きを取り戻したように見えるが、一応離れた位置から声を掛ける。
奏「まりやお姉さま、怖いのですよ…」
 奏ちゃんがひそひそ声で話しかけてきた。
瑞穂「暑くて気が立ってるみたいね。何か食べさせたら落ち着くかもしれないわ」
まりや「あたしは動物か」
奏「聞こえてたみたいなのですよ」

由佳里「どうかしたんですか?何かバタバタ音がしてましたけれど」
 降って沸いた災害(人災)の事後処理作業をしていると、
 騒ぎを聞きつけたらしい由佳里ちゃんが食堂へとやってきた。
瑞穂「まりやが暴れたのよ。暑くて気が立ってるみたいだから、由佳里ちゃんも接近する際には気をつけたほうがいいわ」
まりや「猛獣かあたしは」
奏「猛獣より怖かったのですよ」
 ポツリと小さな声で呟く奏ちゃん。
まりや「聞こえてるわよ、奏ちゃん」
奏「はわわ、聞こえてたのですよ」
由佳里「あはは(笑)でも、今日はほんっと暑いですよね〜」
まりや「ほんとよ。汗びっしょり」
瑞穂「まりやは暴れたからでしょ」
由佳里「麦茶でも飲みますか?私飲みに来たんですけど」
まりや「うん、飲む〜」
由佳里「お姉さまと奏ちゃんの分も注ぎましょうか?」
瑞穂「そうね、1杯貰おうかしら」
奏「奏も少し喉が渇いたのです」
由佳里「じゃあ、皆の分用意しますね」
瑞穂「ありがとう、由佳里ちゃん」
奏「あ、奏お手伝いするのですよ〜」

瑞穂「それにしてもまりや、さっきあれだけ飲んだのに、まだ飲むの?」
まりや「暴れたから喉が渇いたの」
瑞穂「暴れなければいいじゃないの…」
まりや「それは無理な話ね」
瑞穂「偉そうに言わないでくれる、まりや…」
由佳里「あれ、半分しかないんですね、足りるかな…」
 皆の分の麦茶を注ぎながら呟く由佳里ちゃん。
瑞穂「まりやの分は半分でいいわよ」
まりや「瑞穂ちゃん、それは酷いんじゃないかな」
由佳里「何かあったんですか?」
奏「さっき、まりやお姉さまが麦茶半分一気に飲んじゃったのですよ」
由佳里「え、このポット半分?」
瑞穂「ええ。しかもラッパ飲みよ」
由佳里「ええ〜〜〜!」
まりや「何だ由佳里、その反応は。私のキッスを皆に分けてあげようっていう私の心遣いが分からないのか〜〜!」
由佳里「そっ、そんなの要りませんよ〜〜〜!」
まりや「何だと〜〜〜!ゆかりんめっ、このっこのっ」
 由佳里ちゃんの身体をまさぐり始めるまりや。
由佳里「お姉さま止めてくだっ、あはははっ、止めっ、ゆかりんじゃなっ、おね、あはははははは(泣笑)」
 その後、何とかまりやを静止したものの時すでに遅く、
 由佳里ちゃんはぐったりとして倒れてしまった。
 半笑いの顔をしながら軽く痙攣している…。

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   第2話 「何食べよ」


奏「そういえば、そろそろお昼なのですよ」
瑞穂「もうそんな時間なのね。まりやが暴れてたから気が付かなかったわ」
 由佳里ちゃんを膝枕で介抱しながらまりやを皮肉る。
まりや「はいはい、あたしが悪かったわよ」
 さすがに反省するまりや。
瑞穂「後片付けが大変なんだから、もう少し静かに暴れて欲しいところね」
まりや「いや、それはちょっと難しい注文だと思うよ、瑞穂ちゃん…」

由佳里「それで、今日のお昼どうしましょう」
 何とか復活した由佳里ちゃん。まりやの妹だけあってさすがに回復が早い。
 対まりやくすぐり耐性でもあるのかもしれない。
 今日は寮母さんがお休みで、朝は由佳里ちゃんが朝食を作ってくれた。
まりや「たまには外に食べに行く?」
瑞穂「そうね…。この暑い中、料理をするのはきっと大変ね」
由佳里「えっ、あっ、私は全然大丈夫ですよ」
まりや「いいのいいの。ぜ〜んぶ瑞穂ちゃんのおごりだから」
由佳里「そんなっ、悪いです」
奏「そんな〜」
 二人が慌てて遠慮するが、確かにまりやの提案に乗った手前、
 二人にお金を出させるわけにはいかない。
瑞穂「気にしないで。奏ちゃんや由佳里ちゃんにはいつもお世話になっているから、そのお礼。あっ、まりやは当然自腹よ」
まりや「え〜何であたしだけ、瑞穂ちゃんはあたしに世話になってないっていうのか〜?」
 ぶーぶーと駄々をこねるまりや。
瑞穂「確かに世話にはなっているけれど、まりやの宿題をやったり、由佳里ちゃんの勉強をまりやの代わりに教えてあげたり、まりやの起こした問題のアフターフォローを…」
まりや「はいはい分かった分かりました!も〜瑞穂ちゃん、意外に根に持つタイプよね」

まりや「じゃあ、どこに食べに行く?」
瑞穂「そうね。二人は何が食べたい?何でもいいわよ」
 奏ちゃんと由佳里ちゃんに問いかけるが、
奏「奏は何でもいいのですよ」
由佳里「私も何でも…」
 遠慮しているのか、二人からは意見が出てこなかった。
まりや「二人とも、瑞穂ちゃんの財布の中身でも気にしてるの?大丈夫よ。
瑞穂ちゃんの財布の中には万札がいっぱい入ってるんだから」
由佳里「ええ〜〜〜〜!」
奏「ほ、ほんとなのですか!?」
瑞穂「な、何言ってるのよまりや!嘘、嘘に決まってるじゃない!」
まりや「にゃっはっは(笑)こうでも言わないと二人から意見が出ないじゃない」
瑞穂「もっと別の方法があるでしょう…。でも二人とも、本当に遠慮しなくてもいいのよ。
フカヒレとかフグ刺しとかでなければね」
 二人に笑いかける。
奏「奏、お姉さまが食べるものと一緒のものが食べたいのですよ」
由佳里「私も同じものがいいです」
瑞穂「ほんとにそれでいいの?」
奏・由佳里「はい」

瑞穂「そう。それじゃあ、どうしようかしら」
まりや「そうね〜。あまり重いものはバツかな。由佳里はハンバーグでいいかもしれないけど」
由佳里「そ、そんなことありません」
まりや「そっか、ハンバーグじゃないといけないのか」
由佳里「まりやお姉さま!」
瑞穂「まりや、あまり苛めないの」
まりや「いや、これ日課だから」
由佳里「そんなこと日課にしないで下さい!」
 そんなことを日課にされている由佳里ちゃんの未来を思うと嘆かずにはいられない。
瑞穂「でも、軽く食べられるものがいいかもね」
まりや「あと、クーラーのガンガン利いてる店ね」
瑞穂「大体の店はクーラーが利いてるんじゃない?」
まりや「クーラーの利きが悪い店とかあるし」
瑞穂「まぁ、そういう店もあるかもしれないけれど…。そうだまりや、食べ物の情報誌持ってないの?」
まりや「あ、確かホット○ッパーがあったはず」
 まりやは食堂に置いてあるマガジンラックを探り、赤い本を掴むとテーブルの上に広げた。

 数ページめくるが、さすがに夏だけあって、スタミナ系料理店の紹介が多い。
奏「見てるだけでお腹いっぱいになっちゃいそうなのですよ」
瑞穂「確かにそうね…」
 暑くてあまり食欲の無いときにこってりした料理は見るだけでもキツイ。
由佳里「さすがに店内のクーラーの利き具合は書いてありませんね」
まりや「そりゃそうでしょ」
 ペラペラとページをめくっていくと、涼しそうなメニューの特集もやっていた。
まりや「ざるそば、そうめん、冷やし中華ってところかな。涼しいメニューっていうと」
瑞穂「そうね。あと、パスタのある店なら冷製パスタとかもあるんじゃないかしら」
由佳里「冷製スープやビシソワーズとかもいいですね〜」
奏「ビシソワーズって何なのですか?由佳里ちゃん」
由佳里「ビシソワーズっていうのは、フランス料理でジャガイモの冷たいポタージュのことだよ。
冷たくって美味しいの」
奏「ジャガイモなのですか〜」
瑞穂「じゃあ、そこにしましょうか」
まりや「よっし、決まったら早速…と言いたい所だけど」
瑞穂「何か問題でもあるの?」
まりや「問題っていうか…うん。身体がベタベタして気持ち悪い」
瑞穂「まぁ、そうね…。でも、帰ってくるときにも結局汗をかいてしまうわよ?」
まりや「帰ってきたらまたシャワー浴びる」
瑞穂「分かった。じゃあ、皆シャワーを浴びてから行きましょうか」
まりや「おー」
由佳里「分かりました」
奏「はいなのですよ〜」

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   第2.8話 「sultry and sultry girls」


 30分後。シャワーを最後の僕が浴び、部屋に戻って服を着替える。
 髪を整え、軽くメイクを施す。大体終わったところで全体をチェックする。
まりや「かんぺき。宮小路瑞穂子、華麗に変身完了?」
 いつの間にかまりやが扉を開けて中を覗いていた。
瑞穂「意味が分からないよまりや…」
 なぜ瑞穂"子"?
まりや「あ、瑞穂ちゃん、ちゃんとUVケアしてる?」
瑞穂「紫外線対策?」
まりや「うん」
瑞穂「確か化粧品の中にUVケアの出来るものがあったと思うけど…」
まりや「それだけじゃダメよ…っていうか、いつもそれだけ?」
瑞穂「うん…」
まりや「それだけって…、何でそれだけなのに、
いつもSPF高い日焼け止めしてるあたしより肌が白いんじゃ〜〜!!」
瑞穂「わわっ、ここで暴れないでよまりや〜〜〜〜!!」
 思わず屈んで身を守るが…。
瑞穂「…?」
 何の物音もしない。ふと見上げると、まりやが腕を組み仏頂面でこちらを睨んでいた。
まりや「ここで暴れたらまた汗かいちゃうじゃない」
瑞穂「そ、そう…。よかった」
 ほっと息を吐く。
瑞穂「まりや、僕、どこかおかしいところない?」
まりや「無いわよ」
瑞穂「そっか。じゃあ行こう」
まりや「その不自然なくらいに白い肌以外はね」
 そう言い放つとくるりと踵を返し、歩いていくまりや。
瑞穂「……」
 いじけてるみたいだ…。僕のせいじゃないのに。

 全員が玄関に揃った。
瑞穂「じゃあ、行きましょうか」
奏「はいなのです〜」
由佳里「は〜い!」
まりや「瑞穂ちゃんクーポン持った?」
瑞穂「ええ、持ったわ」
まりや「じゃあって熱っ!」
瑞穂「うわっ…」
 まりやが玄関のドアを開けた瞬間、熱の塊が飛び込んできた。
由佳里「うわぁ…」
奏「溶けちゃうのですよ〜」
 とりあえず皆玄関の外に出て扉を施錠し、
 うだるような暑さに思わず手で太陽を隠しながら空を見上げた。
瑞穂「すっごくいい天気ね」
まりや「この熱さの前じゃ、その言葉によって何にも救われないわ…」
由佳里「もうちょっと曇ってくれたら涼しくなりそうなんですけど…」
奏「でも、玄関を開けたときよりは暑くないのですよ」
瑞穂「とりあえず、歩きましょ」
まりや「そうね」

 皆で商店街に向かって歩く。
まりや「そういえば皆聞いてよ。瑞穂ちゃんってさ、日焼けしない体質なんだよ〜」
由佳里「そうなんですか?」
瑞穂「ええ、そうみたい…。皆に言わなくてもいいじゃない、まりや」
まりや「だって〜、ずるいよ〜」
奏「羨ましいのですよ〜」
由佳里「奏ちゃんも色白いじゃない。いいなぁ〜」
まりや「いいなぁ〜」
まりや・由佳里「いいなぁ〜」
瑞穂「そんなこと言われても、体質なんだから仕方ないでしょ…」
奏「か、奏はちゃんと日焼け止めしてるのですよ〜」

 まりやにチョップを入れたり奏ちゃんの頭を撫でたり
 由佳里ちゃんの好きなハンバーグのトッピングについて話しながらてくてくと歩いていく。

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   第3話 「in the cafe」


まりや「ここ…だよね」
瑞穂「うん」
 French cafe;oasis。クーポンを見て確かめる。
 フレンチカフェ。フランス料理店である。
 フランス料理店と言うと何だか敷居や値段が高そうなイメージがあるが、
 結構安い店もある。
 さすがにスーツにドレスの様なドレスコードがある店は
 敷居に比例して値段も高いのだろうが。
まりや「じゃあ入ろう」
瑞穂「そうだね」

まりや「あ〜〜、サイッコー!」
瑞穂「ふー。涼しいわね」
奏「生き返るのですよ〜」
由佳里「涼しい〜」
 中に入った瞬間に気温が一気に下がり、汗が引いていくのがはっきり分かる。
 少し肌寒いくらいだ。
店員「いらっしゃいませ。4名様でしょうか」
瑞穂「はい」
まりや「禁煙席で」
店員「かしこまりました。それではこちらへどうぞ」

 4人座りのテーブルへと案内され、腰を下ろす。
まりや「何にする?」
奏「パスタ以外もいっぱいあるのですよ」
由佳里「それはそうだよ(笑)」
まりや「ねぇ由佳里、スパゲティとパスタって何が違うの?」
由佳里「スパゲティはパスタの一種なんです。
パスタは形や細さによって名前が違っていて、スパゲティはロングパスタって種類です。
他のロングパスタには、スパゲティーニやカペリーニとかがありますね」
まりや「へぇ〜。スパゲティーニってスパゲティをフランス風に言うとなるのかって思ってたわ」
瑞穂「それはどうかと思うけれど…、でもさすがは由佳里ちゃんね」
由佳里「えへへ…」
 照れたように微笑む由佳里ちゃん。
まりや「じゃあ、由佳里のオススメとかは?」
由佳里「う〜ん、好みは人それぞれですから…」
まりや「逃げたな」
由佳里「違いますよ〜」
瑞穂「こんなに涼しいと、別に冷製パスタじゃなくてもいいって感じね」
奏「はいなのです。少し重いメニューでもいけちゃう気がするのですよ」
まりや「由佳里はいつ何時でもハンバーグ食べられるけれどね」
由佳里「そんなこと!…な、無いわけじゃないですけれどぉ…」
瑞穂・奏「ふふふふ…」
 恥ずかしそうに言う由佳里ちゃんに、思わず吹き出してしまう僕と奏ちゃん。
由佳里「も〜、奏ちゃんもお姉さまも笑わないで下さい〜!」
瑞穂「ごめんなさい(笑)」
奏「ごめんなさいなのですよ〜(笑)」
由佳里「うぅ〜」

瑞穂「じゃあ、私は和風カルボナーラと、シーフードサラダにするわ。奏ちゃんは?」
奏「奏は…京野菜と椎茸のスパゲティがいいのです」
瑞穂「他には何かいる?」
奏「いえ、いいのですよ」
 遠慮してるのかな。でも、奏ちゃんは元々小食だし、
 ほんとにこれだけでいいのかもしれない。
瑞穂「そう。じゃあ、シーフードサラダを一緒に食べましょうか」
奏「よ、よろしいのですか?」
瑞穂「ええ」
奏「ありがとうございますなのですよ〜」
 にこっと笑顔になる奏ちゃん。
まりや「由佳里は何にするの?」
由佳里「私はほうれんそうたらこスパで」
瑞穂「他には?」
由佳里「これだけで十分です」
 これは…さすがに遠慮してるんだよね…。
 まりやにそっと目配せする。
 まりやは僕と目が合うと、軽く頷いた。

まりや「よ〜しじゃあ、もう1品はあたしが奢ろう」
由佳里「ええっ!」
まりや「何だその驚きようは。あたしが奢ることがそんなに信じられないのか〜!」
 うりうりと由佳里ちゃんの身体をまさぐるまりや。
由佳里「まりやお姉さま違っ、やめっ、あははは(笑泣)」
瑞穂「こらこらまりや」
 たしなめると、動きが止まった。まりやはくしゃっと由佳里ちゃんの頭を撫でる。
まりや「あたしが人のご飯奢るなんて、一生のうちに一度あるかないかの出来事なんだから、
遠慮なく奢られなさい」
瑞穂「由佳里ちゃん、ね?」
 由佳里ちゃんと目を合わせ、微笑みかけながら頷いてみせる。
由佳里「はい、じゃあ…」
 由佳里ちゃんはそう言って俯くと、
由佳里「チキンの赤ワイン煮込み」
まりや「はいはい」
由佳里「と」
まりや「…と?」
由佳里「ルッコラと生ハムのサラダを」
まりや「……1品って言ったじゃない!」
由佳里「もう1品くらいいいじゃないですか〜!」

 「…!! …!」

奏「二人とも仲がいいのですよ〜」
瑞穂「ふふっ、そうね…」

瑞穂「で、まりやは何にするの?」
まりや「ん〜、何にしよっかな〜」
瑞穂「まだ決めてなかったのね…」
まりや「だって〜、目移りするんだもん。皆とメニュー被りたくないし」
 天邪鬼な…。
奏「ねぇ由佳里ちゃん、この娼婦風パスタってどんなのなのですか?」
瑞穂「娼婦って…、その、娼婦よね」
まりや「奏ちゃん。耳を塞いでおきなさい」
奏「奏も意味くらいは分かるのですよ」
まりや「まぁっ、奏ちゃん、瑞穂ちゃんに穢されてしまったのね。可哀想に…よよよ」
瑞穂「穢してません!何を言い出すのよまったく…」
 しかも"よよよ"って…。
由佳里「それはブッタネスカって言ってね、アンチョビとかの小魚をトマトソースや
ケッパーっていうピクルスやオリーブ、赤唐辛子、黒こしょうで味付けしたものを言うの。
少し辛めのパスタかな」
まりや「で、何で娼婦風なの?」
由佳里「いろいろな説があるみたいです。刺激的な味わいが娼婦を思わせるパスタとか、
娼婦が客をもてなすためのパスタとか、お客を待っている間にありあわせの材料で簡単に作ったパスタとか。
どれが本当かは知らないんですけど」
瑞穂「ほんとに物知りね、由佳里ちゃん」
由佳里「料理のことだけですよ」
奏「それでも十分凄いのですよ〜」
由佳里「えへへ、ありがと」
まりや「ほぉ〜。でも、美味しそうね。それにしようかな。
あとは…白菜とかぼちゃのグラタン、君に決めたっ!」
瑞穂「それ、何?」
 君って誰?

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   第4話 「閑話」


 皆の注文も終わり、料理を待つのみとなった。
瑞穂「でも、娼婦風なんて、日本じゃ考えられないネーミングよね」
まりや「日本風に言うと、ソー○風?いや、ヘ○ス風かな」
瑞穂「まりや!」
まりや「おっと、さすがに失言だったね。でも振ったのは瑞穂ちゃんだよ」
瑞穂「それはそうだけれど…。いきなり何てこと言うのよ」
奏「何なのですか?ソー○とかヘ○スとか…。
奏、○鹸とか健○とかいう意味だと思ってたのですよ」
瑞穂「いえ、合ってるわよ。奏ちゃん。それ以上の意味の追求は不要よ。分かった?」
奏「は、はいなのですよ…」
まりや「まぁ、由佳里は意味を知ってそうよね〜。耳年増だし」
由佳里「し、知りませんよっ!?」
 耳まで赤くなりながら見事に声を引っくり返す由佳里ちゃん。説得力ゼロ…。
まりや「説得力ゼロよ由佳里。一体何のことだと思ったのかしら(にやり)」
由佳里「そっ、それはぁ…」
 何か言い訳を考えているのか、目の前でバタバタと手を振りながら慌てている。
瑞穂「まりや、程ほどにしておかないと、由佳里ちゃんが可哀想よ」
まりや「はぁい」
由佳里「う〜(赤)」
まりや「でも、瑞穂ちゃんがそんな言葉の意味を知ってるってのも問題よね〜」
瑞穂「わっ、私はたまたま知ってたのよ」
まりや「ほんとに〜?実は行ったことあるんじゃないの〜?」
 何を血迷ったかとんでもないことを口走るまりや。
瑞穂「あっ、ありません!誤解されるようなこと言わないで!
て、っていうかまりやが知ってることも問題なんじゃないの?」
まりや「あたしはいいのよ。耳年増だしね」
 うう、開き直ってるし…。

瑞穂「でも、そういう国民性って面白いわよね。
きっとフランス人は皆まりやみたいな性格なのかしら」
まりや「ちょっと、それってどういう意味よ」
瑞穂「あら、誉めてるんだけれど。明け透けで、物事の表面だけを見たりしないでしょ。まりやは」
まりや「む?う〜ん…」
 誉めてない部分も結構あるんだけどね。
奏「でも、国民性といえばこんな話があるのですよ」
まりや「ん?」
瑞穂「どんなのかしら」
奏「えっと、ある船が火事になりました。このままでは乗客が焼け死んでしまうので、
船長は皆を海に逃がそうとします。しかし船にはいろんな国の人が乗っているのですが、
皆溺れるのを嫌がって海に飛び込もうとしません」
まりや「どうせ乗っていればいつかは海に飛び込むことになるのに。アホね」
瑞穂「確かに最後まで残っているのは危険よね。重いものが沈むときには周囲に渦を生むものだし。
あ、奏ちゃん、続けていいわよ」
奏「あ、はい。飛び込もうとしない乗客を見て、船長は国民性を考えてこう言うのです。
   『イギリス人には、「紳士はこういう時、海に飛び込むものです。」
ドイツ人には、「海に飛び込みなさい。これは厳粛な命令です。」
フランス人には、「決して海に飛び込まないで下さい。」
イタリア人には、「さっき美女が飛び込みましたよ。」
日本人には、「みなさん飛び込みましたよ。」
大阪人には、「阪神が優勝しましたよ。」』」

瑞穂「面白い話よね。イタリア人は美女がニンジンなわけね」
まりや「情熱的な国って言われてるくらいだからね」
由佳里「でも、フランス人には『決して海に飛び込まないで下さい』って、
どういうことなんでしょう。反対のことをしたがるのかな」
奏「天邪鬼、っていうことなのでしょうか」
まりや「……。瑞穂ちゃん」
瑞穂「あ、あら、まだ料理は来ないのかしら」
まりや「さっきのはどういう意味で言ったのかしら?」
瑞穂「な、何のことかしら」
まりや「くぉら〜〜〜!」
瑞穂「わわっ、さ、さっきの話は知らなかったんだよ!」
まりや「嘘」
瑞穂「どうして」
まりや「だって、さっき瑞穂ちゃん、『面白いはなしよね』って言った」
瑞穂「それがどうしたの?」
まりや「『よね』って、普通その話を知ってて、『何々だよね〜』っていうニュアンスで使うものじゃない」
 いつになくまりやが鋭い…。
瑞穂「そうとは限らないじゃない。ほら、言い間違えたのよ!」
まりや「『そうとは限らない』っていうのは、犯人が言い逃れをするときの常套句よ。
『そうとは限らない』なんて言うときは大体『そう』なのよ!」
 うう〜、どうしよう。
まりや「おしおきじゃ〜〜!」
瑞穂「いや〜〜〜〜!(泣)」

奏「お姉さま、ごめんなさいなのですよ…」
由佳里「二人ともほんと仲良いよね」

 この後店員さんに『お静かにお願いします』と注意されたのは言うまでも無い。
 自業自得なんだけど…とほほ。

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   第5話 「次の目的地」


 料理が全て運ばれ、食事も中盤に差し掛かった頃。
まりや「この後どうする?どこか遊びに行く?」
瑞穂「う〜ん、奏ちゃんと由佳里ちゃんは今日は何か用事はある?」
奏「特に無いのですよ」
由佳里「私もありません」
瑞穂「そう。まりやはどこかに行きたいの?」
まりや「ん〜、っていうか、ウチに帰っても暇だし、涼しいとこで暇潰ししたいな〜って思ってね」
由佳里「そうですね。移動時間は暑いですけど、ずっとここには居られませんからね」
まりや「あ、そうだ。カキ氷食べに行こうよ」
瑞穂「カキ氷ね…。ここでは食べられないのかしら」
 由佳里ちゃんがメニューを覗く。
由佳里「え〜っと…あ、あるみたいですね」
まりや「いや、別のところで食べよう」
瑞穂「どうして?」
まりや「ちょっと遠いんだけど、美味しい甘味処があるの」
奏「もしかして、Sweet Daysなのですか?」
まりや「知ってるんだ奏ちゃん」
奏「はいなのです。あそこの苺ミルクがすっごく美味しいのですよ〜」
 味を思い出したのか、目が虚ろになる奏ちゃん。
瑞穂「そんなに美味しいの?」
まりや「結構美味しいよ。甘味専門店だしね。多分ここのより量が多くて安いし。
それにかき氷以外のもあるし」

瑞穂「分かったわ。じゃあ、次の目的地はそこね」
由佳里「はいっ」
まりや「イエッ・サー」
奏「……」
 奏ちゃん…。
まりや「まだトリップしてるね」
由佳里「幸せそうな顔してますね」
瑞穂「奏ちゃん、奏ちゃん」
 奏ちゃんに呼びかけながら目の前で軽く手を振り、反応が無いので身体を軽く揺する。
奏「はっ」
まりや「あ、気が付いた」

奏「あれ、苺ミルクが無くなってるのですよ」
由佳里「夢の中で食べてたんですね…」
 それは凄い想像力だと思うけど…。
瑞穂「奏ちゃん。ここはフランス料理店よ」
奏「そういえばそうだったのです…」
 奏ちゃん、少し残念そうだ。
まりや「大丈夫よ。あとでそこ行くから」
奏「ほんとなのですか!?」
瑞穂「ええ」
奏「嬉しいのですよ〜!」
 急ににこにこと笑顔になる奏ちゃん。
瑞穂「でもその前に、目の前の料理を食べてしまわないと」
奏「あ、そうでした」
瑞穂「ふふっ」
由佳里「あははっ」
奏「でも…」
 ふと、奏ちゃんが悲しそうな表情になった。
瑞穂「どうしたの?」
奏「口の中に苺ミルクの後味が残ってて、それを壊したくないのですよ〜(泣)」
まりや「ぷ」
瑞穂「あはははっ」
由佳里「あははは(笑)」

瑞穂「でも、そこまで想像出来るのも一つの才能よね」
まりや「そうね。案外クリエイティブな分野に向いてるのかもしれないね」
瑞穂「案外でもないわ。奏ちゃん、演劇部だし」
まりや「そっか。じゃあ丁度いいのかもね」
奏「そ、そんなことないのですよ。奏、まだ舞台にも立ったことないのです…」
 俯いてしゅん、となってしまう奏ちゃん。
瑞穂「大丈夫よ奏ちゃん。奏ちゃんは真面目でいい子だから、いつかきっといい役が貰えるわ」
まりや「あたしは続けることに意味があるなんて思わない。
でも、無責任な言い方かもしれないけど、必死で続けた何かに意味が生まれることはあると思う。
頑張ってみるといいことがあるかもしれないよ、奏ちゃん」
奏「お姉さま方…。ありがとうございますなのですよ」
由佳里「へぇ〜、まりやお姉さま、たまには…」
 とまで言いかけて慌てて自分の口を塞ぐ由佳里ちゃん。
まりや「ほっほ〜。何だね由佳里くん。
何か言いたいことがあるならこのお姉さまに是非教えて頂けるかしら。『たまには』?」
 手をわきわきと動かしながら由佳里ちゃんに迫っていくまりや。
由佳里「ひ、ひえぇ〜〜〜!(泣)」

瑞穂「これは…さすがに身から出た錆ね…」
奏「ご愁傷様なのですよ…」
瑞穂「でも、由佳里ちゃんが言わなければ私が同じ轍を踏んだかもしれないわ…」
 まぁ、日頃からこういうことを言われるようなことをしているまりやにも問題があるんだけどね…。

 食事も終わり、軽く一息。お冷を飲む。
瑞穂「それでまりや、今から行くお店ってどの辺にあるの?」
まりや「ここから歩いて30分くらいかな」
瑞穂「結構歩くのね」
まりや「バスでも近くまで行けるよ。今食べたカロリーを消費したいなら歩きをオススメするけど」
由佳里「あ〜、なら私は少し歩きたいです…」
まりや「一番食べたしね」
由佳里「う"…」
瑞穂「私は歩きでも問題ないけれど、奏ちゃんが少し心配ね」
奏「奏、大丈夫なのですよ」
 とは言うものの、あまり説得力は無い。
まりや「まぁ、途中でコンビニとかで涼みながらゆっくり行けば大丈夫でしょ。急ぐ旅じゃないしね」
瑞穂「旅って」
まりや「それに体力も充電したし。元気百倍!」
瑞穂「そう。じゃあそろそろ行きましょうか」
まりや「こらこら、瑞穂ちゃん」
瑞穂「何?まりや」
まりや「何じゃない。あたしが元気百倍って言ったのよ?」
瑞穂「そ、それがどうかしたの?」
まりや「どうもこうも、瑞穂ちゃんが、『ア○パ○マ○!』って言ってくれないと、
締まらないじゃない!」
瑞穂「な、何で私がそんなこと言わないといけないの!」
まりや「流れよ!」
瑞穂「知らないよそんなこと!」

 「…!!…!」

奏「見てるだけで、面白いのですよ」
由佳里「そうだよね。下手な漫才コンビよりもずっと面白いよね」

 談笑(口論)も終わり、レジで清算を行う。
瑞穂「そういえば、誰も冷製スープ頼まなかったわね。ビシソワーズも」
由佳里「そういえば」
奏「そうなのですよ」
まりや「それが決定打だったような気もするけど…。店内が涼しいショックですっかり忘れてたわ」

===== * ===== * ===== * ===== * ===== * ===== * =====

   第6話 「sultry and sultry girls. returns - code name:O・T・L -」


まりや「……店内に戻ろうか」
瑞穂「さっきと言ってることが違うよまりや…。確かに私も少し戻りたいけれど」
 外に出ると、再び強い日差しと熱気が僕たちを襲ってきた。
まりや「仕方ないか…。じゃあ助さん格さん、参りましょうか」
 突然芝居がかったように台詞を放つまりや。
瑞穂「…誰が助さんで誰が格さんなの?」
まりや「それはもう由佳里が助さんで」
由佳里「わ、私ですか?」
まりや「奏ちゃんが格さん」
奏「奏、格さんなのですか…」
まりや「奏ちゃん真面目だしね。由佳里はエロいから助さん」
由佳里「わっ、私エロくありません!」
まりや「ま〜ま〜、隠さなくていいから」
由佳里「隠してませんよ!」
 真っ赤になって反論する由佳里ちゃん。そんなにムキになって反論すると、
 逆に怪しいっていうことには気付いてないようだ。
 まりやはそこが楽しくてからかっているのだろうけど…。
瑞穂「じゃあ、私は何になるのかしら」
まりや「それは決まってるでしょ」
瑞穂「?」
まりや「お銀。ウチのお色気担当」
瑞穂「なっ、ま、まりや!」
まりや「だって〜、事実じゃ〜ん(笑)」
 どうしてこの中で黒一点の僕がお銀に… OTL

由佳里「でも最近の水戸○門って助さんと格さんの性格逆ですよね」
まりや「そうよね〜。日記付ける助さんなんて、助さんじゃないわ」
奏「水戸○門も色々と変わってきたのですよ」
まりや「ハチベエも居ないしね。あんなオチに使いやすいキャラ、どうして外すかな」
由佳里「でも、お銀はず〜っと出てますよね」
瑞穂「そうなの?」
まりや「瑞穂ちゃん、水戸○門見たことないの?」
瑞穂「そういうわけではないわ。というか、この前一緒に見たじゃない。
でも、子供の頃はあまりバラエティ番組を見たことが無かったから…」
由佳里「バラエティ…」
奏「水戸○門、バラエティ番組なのですか?」
瑞穂「え、違うのかしら…」
まりや「いや…、まぁ、否定はしない…。でも、一応勧善懲悪時代劇だよ」

由佳里「毎回パターン決まってますけどね」
奏「大体最初に町娘を助けて、その娘の家や近くに宿を取って、
『越後のちりめん問屋の隠居』とかって誤魔化しながら町の様子を探るのです」
まりや「大体その辺りで男性陣お楽しみタイムがあるわけよ」
瑞穂「お楽しみタイム?」
まりや「お銀のお風呂に決まってるでしょ」
瑞穂「そんなのがあるの…」
由佳里「でも、最近減りましたよね。由美○おるのお風呂シーン」
まりや「まぁね。でも最後のエロい忍び装束見てる限りでは相変わらずプロポーションいいのよね、
お銀って。さすがだわ」
 どうしてそんなところばかり見てるんだまりやは…。
奏「それで、最後に町の経済を牛耳る越後屋や備前屋の後ろで糸を引いて
悪政を行う悪代官の屋敷に乗り込むのですよ」
まりや「で、粗方倒した後に、『静まれ静まれ〜、静まれ〜』ってね。
でも普通自分のところに喧嘩売ってきた不届き者に『静まれ』って言われて皆が皆止まったりとかしないよね。
悪の巣窟なんだよ?そこ。正体知らない内はいくら黄門様と言えどもただのジジイなんだし」
瑞穂「まぁ、確かにそうね」
 ただのジジイは言いすぎだと思うけど…。
奏「きっと律儀な悪人さんなのですよ」
まりや「け、結構難しい性格の悪人なのか…」
由佳里「毎回そんなに違いは無いのに、あると見ちゃうんですよね」
まりや「時代劇なんかそんなもんでしょ」
瑞穂「見慣れているものに安定感や安心感を感じるのかもしれないわね」
まりや「舞台時代劇とかで客が『よっ、待ってました!』っていうアレね」
奏「でも…日本全国漫遊してて、毎週悪代官を倒していたら、
水戸○門の世界には代官が居なくなるような気がするのですよ」
由佳里「奏ちゃん、それ言ったらどの時代劇もお仕舞いだと思うよ…」

まりや「コンビニ寄らない?」
 20分程歩いたところで、まりやがコンビニ休憩を提案した。
 まりやは移動に30分掛かるとは言っていたが、
 今は奏ちゃんの歩く速度に合わせて移動しているので
 後20分くらいは掛かりそうだ。丁度いいかもしれない。
瑞穂「そうね。寄って行こうか」
まりや「ジュースでも買おうよ。あと冷え○タも」
瑞穂「冷え○タって、どこに貼るの?まさか額じゃないでしょうね」
まりや「誰がそんなとこに貼って街中歩くのよ。罰ゲームじゃないんだから。
首筋よ首筋。ここが冷えると凄く気持ちいいんだよ。知らない?」
瑞穂「そうなの。初めて知ったわ」
由佳里「確か、血管やリンパ節が表面近くにある場所を冷やすと
効率的に身体を冷やせるって聞いたことあります」
まりや「身体を冷やすときに脇の下や膝の裏を冷やしたりするでしょ。あれよ」
瑞穂「なるほどね」
まりや「でも、首冷やしながら寝たら風邪ひいちゃうけどね」

 ウイーン、という機械的な音と共にドアが開き、中から圧倒的なまでの冷気が噴き出してくる。
まりや「Oh、冷えてるじゃない」
 コンビニの中に入ると、奏ちゃんが寒そうに自分の身体を抱きしめた。
奏「奏、少し寒いのです」
由佳里「そうかな。私には丁度いいよ?」
まりや「あんたと一緒にしないの」
瑞穂「奏ちゃん大丈夫?」
奏「あ、気にしないで下さいなのですよ。汗が冷えただけだと思うので、
すぐに大丈夫になると思うのです」
 そう言いながらも軽くぶるっと震える奏ちゃん。
 確かに店内は涼しかった。寒いと形容してもいい温度かもしれない。
瑞穂「無理に店内に入らなくてもいいのよ?奏ちゃんの身体に障ったらいけないわ」
奏「だ、大丈夫なのですよ〜」
まりや「まあまあ瑞穂ちゃん。いざとなったら瑞穂ちゃんの抱擁で暖めてあげればいいじゃない」
 からかうように言うまりや。
瑞穂「まりや、そういう問題じゃないでしょ」
奏「奏、お姉さまにぎゅってして貰えるのですか?」
瑞穂「え、か、奏ちゃん?」
まりや「もっちろんよ。膝枕に添い寝付きよ」
奏「奏、それなら倒れても構わないのですよ」
 何やら期待している顔で僕の顔を見上げる奏ちゃん。何を言い出すんだまりやは…。
まりや「でも、奏ちゃん、もう寒くないでしょ?」
奏「え?…あ、そういえばもう寒くないのです」
まりや「病は気から。内から暖めるのが一番よ。瑞穂ちゃんも修行が足りないね」
 まりやはこそっと僕に耳打ちすると、飲料コーナーへと歩いていった。
瑞穂「こういう方法取るのはまりやくらいだよ…」
 思わず呟いてしまう。
 その横で、奏ちゃんもポツリと呟いた。
奏「残念なのですよ…」

まりや「何飲もっかな」
由佳里「スポドリは飲み飽きてるんじゃないですか?まりやお姉さま」
まりや「まあね」
瑞穂「私はどれにしようかしら…」
奏「…」
 各自各々の飲み物を手に取ると、レジへと向かった。
 それをレジのテーブルの上に置く。
 しかし奏ちゃんは自分のを持ったままテーブルに置こうとしない。
瑞穂「奏ちゃん、いいのよ。置きなさい」
奏「え、でも…」
瑞穂「言ったでしょう。いつもお世話になってるお礼。これくらいしないと、罰が当たってしまうわ?」
奏「あ…ありがとうなのですよ、お姉さま…」
 照れたように微笑みながら、恐る恐ると言った感じで持っていたものをテーブル置く奏ちゃん。
まりや「っていうか、次はあたしが由佳里のジュース奢らなきゃいけない雰囲気?」
瑞穂「あら、当然じゃない」
由佳里「わ、私は自分で買いますから」
まりや「いいわよ。奢ったげる」
由佳里「は、はい。ありがとうございます」
瑞穂「たまにはお姉さまらしいこともしないとね。まりや?」
まりや「はいはい。分かりましたわお姉さま…」

 コンビニから出るとやっぱり凄く暑い。
まりや「暑い〜」
瑞穂「言わないでよ。分かってるから」
まりや「そだ。冷え○タ忘れた」
 まりやが再びコンビニへと入っていった。そしてしばらくして出てくる。
まりや「暑〜い」
瑞穂「もういいよ、それは…」
まりや「皆に貼ったげるね」
 まりやは冷え○タの包装を取ると、僕の背中へと回った。
まりや「ぺたっと」
 軽くひやっとした物が首筋に張られる。
まりや「ぺたっと」
 奏ちゃんにも貼ると、最後に由佳里ちゃんの後ろへと回る。
まりや「ぺた〜っと」
由佳里「うひゃあぁぁっ!」
 突然由佳里ちゃんが素っ頓狂な声を出して飛び上がった。
 まりやが冷え○タではなくよく冷えたジュースを由佳里ちゃんの首筋に押し当てたのだ。
由佳里「何するんですかぁ!」
まりや「ほんの可愛い悪戯じゃない(笑)ほらほら、今度はちゃんと貼ったげるから」
由佳里「ほんとですか…」
まりや「ほんとほんと。自分のお姉さまを信じなさい」
由佳里「う〜…」
 信じられるはずも無いことを無理やり信じさせられる由佳里ちゃん。
 そして…。

由佳里「うひゃぁぁぁぁっ!って、まりやお姉さま!」
まりや「ごめんごめん!冷え○タとジュース間違っちゃったのよ(笑)」
由佳里「嘘です、ありえません、目が笑ってます!もういいです!」
 ぷい、とまりやに背を向ける由佳里ちゃん。
 そりゃ怒るだろうなぁ…。
瑞穂「まりや、やりすぎよ」
まりや「う、ごめん…」
 少し強めにたしなめると、さすがに反省するまりや。
瑞穂「ほら。由佳里ちゃん。私が貼ってあげるわ。それなら大丈夫でしょう?」
由佳里「は、はい…。でも、もういいです」
 いじけてる…。
瑞穂「いいから。こっちへいらっしゃい?それとも、私じゃ信じられないかしら…」
由佳里「そ、そんなこと…!ない…です…」
 由佳里ちゃんがとぼとぼとこっちへと歩み寄ってきた。
 僕は後ろに回ると、首筋に冷え○タをぺたっと貼り付けた。
 そして由佳里ちゃんの肩に"ぽん"、と両手を乗せる。
瑞穂「さて、行きましょうか」
由佳里「はいっ」
奏「はいなのです」
まりや「…よし、行くか」

 再び目的地に向かって歩き出す。
瑞穂「ほんと、思ったより気持ちいわね、これ」
まりや「でしょ?まぁ、貼ってるのが見えるような服だとアウトだけどね」
由佳里「確かに湿布とかと間違われると恥ずかしいですね…コレ」

由佳里「そういえば、さっきのフランス料理店で、
奏ちゃんがちょっと夢の中に入っちゃったじゃないですか」
奏「由佳里ちゃん、その話は恥ずかしいからダメなのですよ〜」
由佳里「あ、大丈夫奏ちゃん、話のメインはそこじゃないの」
瑞穂「それで?」
由佳里「その後、お姉さまが『あはははっ』って笑ったじゃないですか。
お姉さまがそうやって笑うところ、初めて見た気がして…」
瑞穂「ああ、そういえば…。変だったかしら」
由佳里「あ、いえ、そういう意味じゃなくって。
それにそれが変だったら私ってばいつも変になっちゃいますよ」
瑞穂「ふふっ、そうね。まりやはもっと変っていうことになっちゃうわね」
まりや「ちょっと、瑞穂ちゃん?」
瑞穂「ふふふっ、続けて?」

由佳里「それで、その…」
瑞穂「?何かしら」
由佳里「あ、いえ、その…それが凄く…か、可愛いな…って思ったんです」
瑞穂「かっ、可愛い!?」
 思わず声が裏返る。
 笑い方が…可愛い…。

  OTL

まりや「お〜落ち込んでる落ち込んでる。
まぁ、普段の瑞穂ちゃんは『あはは〜』って笑うタイプじゃないからね。ギャップが可愛かったわけか」
由佳里「そ、そんなことありません!お姉さまはいつも可愛いです!」
奏「そうなのですよ〜!いつ何時でもお姉さまは綺麗で可愛いのですよ〜!」

 可愛い  かわいい  カワイイ …
 OTL   Orz    orz

まりや「あ、かなり凹んだね」
 うう…。

===== * ===== * ===== * ===== * ===== * ===== * =====

   第7話 「in the sweets world」


奏「あそこの和風なお店なのですよ〜」
 奏ちゃんが嬉しそうに指差した場所は、次の目的地である、甘味処『Sweet Days』。
瑞穂「やっと着くわね…」
 中継地点だと思っていたコンビニだったが、その後に公園のベンチで休憩したのを皮切りに、
 本屋に寄ったりCDショップに寄ったりといろいろと寄り道を行い、時間的にはもう4時過ぎ。
『oasis』を出たのが大体2時辺りだったはずなので、移動時間は余裕で2時間を経過していた。
由佳里「結構寄り道しましたからね」
 由佳里ちゃんが苦笑しながら相槌を打ってくれる。
 外見は和風っぽい店だ。その割には暖簾に『Sweet Days』と横文字が踊っている。
瑞穂「名前は英語なのに、和風なお店なのね」
まりや「店内も和風テイストになってるね。スイーツは和風洋風どっちもあるけど」

 引き戸の扉を開けると、カランカラン、と涼しげな音がする。
店員「いらっしゃいませ〜」
 中に入るとすぐに店員がやってきた。
店員「いらっしゃいませ。4名様でしょうか」
瑞穂「はい」
店員「テーブル席とカウンター席がございますが、どちらになさいますか?」
瑞穂「テーブル席でいいよね」
まりや「モーマンタイ」
由佳里「古いです、まりやお姉さま…」
店員「ではテーブル席へとご案内致します」
 店員に連れられ、移動する。
由佳里「やっぱり店の中は涼しいですね」
瑞穂「そうね。でもこう何度も気温の差が激しいところを行ったりきたりするのは、
あまり身体に良くない気はするわ…」
奏「確かにそうなのですよ」
まりや「肌も乾燥するしね」

 テーブル席へと移動し、腰を下ろす。
店員「ご注文がお決まりになりましたら、お呼び下さい」
 ペコリと頭を下げて、店員が戻って行った。
瑞穂「さて、何を注文しようかしら」
 テーブルの上にメニューを広げる。
まりや「奏ちゃんは苺ミルクで決定なんだよね」
奏「はいなのです」
 嬉しそうに答える奏ちゃん。
瑞穂「ねえまりや。かき氷の値段のところのBとDっていうのは何?Dの方が高くなってるけれど」
まりや「かき氷はサイズが変えられるんだ。Bは普通のサイズで、Dはデラックスサイズだよ。
コストパフォーマンスはデラックスの方が高いかな」
瑞穂「へぇ…そうなの。由佳里ちゃんは何を注文するのかしら」
由佳里「私は…ちょっと迷ってて。白玉宇治もいいんですけど、抹茶も食べてみたくて…」
瑞穂「そう…それじゃあ、私が抹茶を注文するから、それを半分食べない?」
由佳里「ええっ!そ、そんな、悪いです」
 手をパタパタと振りながら慌てて遠慮する由佳里ちゃん。
瑞穂「私はそんなに量は要らないの。でも、由佳里ちゃんが嫌なら仕方ないけれど…」
由佳里「い、嫌じゃないです!全然嫌じゃないです!」
瑞穂「ふふっ。じゃあ、私のを半分こね」
由佳里「は、はい…」

まりや「ほんとは両方とも頼むつもりだったが、お姉さまの間接キスの魅力には勝てない由佳里であった…完」
由佳里「まっ、まりやお姉さま!変なナレーション入れないで下さい!」
まりや「でも、図星でしょ」
由佳里「ち、違…わ…あ〜もう!どっちだっていいじゃないですか〜!」
 真っ赤になってまりやに切れる由佳里ちゃん。
 結局否定し切れなかったと言うことは、やっぱり図星だったのだろうか。
 そういう素直なところがからかいやすいんだろうけど…。
瑞穂「まりや」
 たしなめるようにまりやの名前を呼ぶ。
まりや「はいはい。ごめんねゆかりん」
由佳里「謝り方に誠意が感じられません!っていうかゆかりんじゃありません!」
まりや「まぁまぁ、とりあえず注文しよ。すみませ〜ん!」
 逃げるように近くにいた店員さんに声を掛けるまりや。
店員「はい。ご注文ですか?」
まりや「はい。ほら注文注文」
由佳里「う〜…」
瑞穂「由佳里ちゃんは白玉宇治金時で良かったのよね」
由佳里「あ、はい」
店員「はい。サイズはベーシックで宜しかったでしょうか」
由佳里「はい」
店員「かしこまりました」
 店員はユニフォームのポケットから取り出した機械のボタンをポチポチと押す。
奏「奏は苺ミルクのデラックスをお願いするのですよ」
店員「苺ミルクですね」
 躊躇せずデラックスを選ぶ奏ちゃん。余程好きらしい。

瑞穂「私は抹茶のかき氷を普通サイズでお願いします。まりやは?」
まりや「う〜ん…」
瑞穂「決めてから店員さん呼べばいいのに…」
まりや「だって〜」
 まぁ、由佳里ちゃんの追及から逃げるために店員さん呼んだんだろうけど。
まりや「ん〜、じゃあスペシャルクレープの…カスタードチーズスペシャルで」
店員「…はい。以上で宜しいでしょうか」
瑞穂「はい」

 店員は注文の確認をすると、戻っていった。
瑞穂「まりや、かき氷を食べに来たんじゃなかったの?」
まりや「そのつもりだったんだけどね。皆かき氷だし」
瑞穂「相変わらず天邪鬼なんだから…」
まりや「うるさいなぁ。ほっといてよ」
由佳里「まりやお姉さまですから、仕方ないですよ」
 さっきの反撃とばかりににっこりとと笑いながら皮肉を口にする由佳里ちゃん。
瑞穂「はぁ。そうね」
 僕も内心笑いながら、わざとため息を付いて由佳里ちゃんに合わせる。
まりや「言うね、二人とも…」

===== * ===== * ===== * ===== * ===== * ===== * =====

   第7.5話 「甘少女」


 しばらくして、注文したものが運ばれてきた。
まりや「さて、食べよっか」
瑞穂「挨拶は?」
まりや「いいんじゃない?」
由佳里「一応した方がいいと思いますけど…」
まりや「も〜しょうがないな。じゃあ主よ今から我々がこの糧を頂くことに感謝させ給えアーメン」
瑞穂・奏・由佳里「アーメン」
 『じゃあ主よ』って言い草は無いんじゃないかな…。しかもやけに棒読みだったし…。

 各々、注文したデザートに手を伸ばす。
 僕は抹茶のかき氷を手に取った。
 スプーンで掬い、一口。
瑞穂「美味しい…」
 思わず言葉が漏れた。
まりや「でしょ?」
由佳里「ほんとに美味しいです、これ」
 由佳里ちゃんも少し興奮気味だ。
 奏ちゃんは…。
奏「……」
 嬉々としながらも黙々とスプーンを口へと運んでいる。
まりや「大満足みたいね」
由佳里「そうですね…」
瑞穂「そうみたいね…」

 しばらくデザートに舌鼓を打つ。
瑞穂「そういえば、もうすぐ夕飯の時間よね」
まりや「夕飯も外で済ましちゃう?」
由佳里「ダメですよ。外食だけだと栄養が偏っちゃいます」
まりや「たった2食じゃない」
由佳里「それでもです。それにあまり外で食べるのは勿体無いです。
帰りにスーパーに寄って材料買って帰ります」
まりや「由佳里、あんたいいお嫁さんになれるわ…」
瑞穂「ふふっ。ほんとね」
由佳里「そ、そんなことないです」
瑞穂「あ、そうだ。はい、由佳里ちゃん。食べかけで申し訳ないけれど…」
 抹茶かき氷を由佳里ちゃんのところまで移動させる。
由佳里「えっ、まだいっぱい残ってますよ」
瑞穂「いいのよ。私は十分に味わったから」
由佳里「そ、それじゃあ、頂きます…」
まりや「よ〜く味わって食べないとねぇ。由佳里?」
由佳里「な、何をですかぁ…」
瑞穂「まりや、あまり不穏当なこと言わないの」
まりや「は〜い。で、今日の夕飯は何にするの?」
由佳里「う〜ん、お姉さま方は何か食べたいものとかってありますか?」
瑞穂「私は…そうね。和風のものが食べたいわね」
まりや「和風かぁ。由佳里は日本料理って何が出来るの?あ、和風ハンバーグ以外で」
由佳里「和風ハンバーグは日本料理じゃありません!」
まりや「えっ、そうなの?」
瑞穂「当たり前じゃない…。和風アレンジってだけで」

由佳里「もう…。でも、大体何でも作れますよ」
まりや「例えば?」
由佳里「例えば…お吸い物とか野菜料理とか魚料理とか」
まりや「肉じゃがは?」
由佳里「作れますよ」
まりや「肉じゃが食べたい」
由佳里「まりやお姉さまは肉じゃがですね」
瑞穂「肉じゃがって、日本料理なのかしら」
まりや「日本料理じゃないの?」
瑞穂「確か肉じゃがはビーフシチューがベースだって聞いたことがあるから…」
由佳里「お姉さま、よくご存知ですね。えっと確か、
ビーフシチューに使う赤ワインやデミグラスソースの代わりに醤油と砂糖を使ったのが肉じゃがの始まりって言う話です」
瑞穂「そうなの。でも確かにワインとデミグラスソースの代わりに醤油と砂糖を使ったら全く別の料理が出来上がってしまうわね…」
まりや「へぇ。よくおふくろの味って言う割には日本料理じゃないんだ」
由佳里「いえ、日本料理ではないわけ…ではないんです」
瑞穂「どういうことかしら」
由佳里「えっと、元々日本料理自体の定義が微妙で、日本から元来ある料理が日本料理っていう考えと、
例え外国から影響を受けたとしても日本独自の味付け、調理法が発達した料理であれば日本料理っていう考えがあるんです」
瑞穂「つまり、前者の言い分なら肉じゃがは日本料理ではなく、後者の言い分であれば肉じゃがは日本料理なのね」
由佳里「そういうことです」

まりや「しかし、ほんっとそういうことに詳しいね由佳里は。それを勉強に活かせばいいのに…」
由佳里「う…」
瑞穂「まりや。人のこと言えないでしょ」
まりや「何?あたしに勉強しろって言うのか瑞穂ちゃん」
 自分のことを棚に上げて、何て理不尽な言いようだ…。
由佳里「それより、瑞穂お姉さまは何か食べたいものはありますか?」
 由佳里ちゃんが助け舟を出してくれる。
まりや「逃げたな」
瑞穂「そうね…。由佳里ちゃんが作ったものなら何でもいいわ」
 そう言って由佳里ちゃんに微笑みかける。
由佳里「え…」
まりや「うわっ、瑞穂ちゃん、気障過ぎ…」
瑞穂「あれ、そ、そうかな」
 顔を赤らめる由佳里ちゃん。よく考えたら流石に気障な言い方だったかな。
瑞穂「ほら、由佳里ちゃんはお料理が上手だから。由佳里ちゃんが作ったものならきっと何でも美味しいってことよ」
まりや「瑞穂ちゃん、それ別の意味でフォローになってるよ…」
由佳里「あああありがとうご、ごごございます…」
 余計慌ててしまう由佳里ちゃん。あ、あれ?
まりや「天然って、罪よね…」
 いや、そういう言葉が自然に出るようになったのは訓練したからであって…。
 って、よく考えてみれば天然であろうとなかろうと、
そういう言葉が自然に出るようになってしまったこと自体が問題なのか…OTL
まりや「治るかどうか、心配ね…」
 まりやが頬杖をついて呟く。
 そうだね…。僕もそう思うよ…。

店員「ご注文でしょうか」
 何故か突然店員がやってきた。
まりや「あれ、誰かボタン押した?」
奏「苺ミルクのデラックスをもう1個お願いするのですよ」
 再び苺ミルクのデラックスを注文する奏ちゃん。奏ちゃんが店員を呼んだらしい。
店員「苺ミルクですね」
由佳里「え、奏ちゃんもう食べたの!?」
奏「この苺ミルクならいくらでもいけちゃうのですよ〜」
 とてもにこにこな奏ちゃん。いつの間にやら奏ちゃんのかき氷の器は空になっている。
由佳里「デラックスって結構大きかったですよね…」
まりや「まぁね。ベーシックの2倍くらいあるから」
瑞穂「最初奏ちゃんが食べきれるか心配だったのだけれど…」
まりや「完全に杞憂だったね。紫苑さんに奏ちゃん、由佳里にハンバーグ、奏ちゃんに苺か…」
瑞穂「言い得て妙だわ…」
 いわゆるかっぱ○びせん状態か。
店員「以上で宜しかったでしょうか」
瑞穂「あ、はい」
店員「かしこまりました。ではすぐにお持ちします」
 店員が戻っていった。
瑞穂「それにしても奏ちゃん、本当に好きなのね」
奏「はいなのです。口の中でさらっと溶ける酷く頼りない柔らかな氷に、
苺の煌びやかな甘さと濃厚なミルクのとろみが加わって、
口の中に甘い切ない天国のような世界に連れて行ってくれるのですよ〜」
 苺ミルクの感想を述べる奏ちゃん、目が虚ろだ。
瑞穂「苺ミルクの感想文を書かせたら凄いことになりそうね…」
まりや「どこぞの料理評論家みたいな台詞ね」
由佳里「っていうか、彦○呂ですね…」
まりや「かき氷のIT革命や〜、とか言い出さないことを祈ろうか」
由佳里「そうですね…」

===== * ===== * ===== * ===== * ===== * ===== * =====

   最終話 「帰り道」


由佳里「大分涼しくなりましたね」
瑞穂「そうね」
 時刻はもう5時過ぎ。店を出て歩き出すと、淡い熱気が身体を包む。
 とはいえ、昼時のあのまとわり付くような強烈な暑さは、もう影を潜めていた。
 日は大分落ちているが、夏だけにこの時間帯でもまだまだ外は明るい。
奏「今日はとても暑かったのですよ〜」
まりや「今日が最高の真夏日なんでしょ?」
奏「ニュースではそう言ってたのです」
まりや「明日から秋だったらいいんだけどね」
由佳里「秋までまだ2ヶ月くらいありますよ」
瑞穂「今日が一番って言っても、明日からまた真夏日が続くのよね」
まりや「憂鬱だわ…」
 まりやは溜め息を吐くと、表情も憂鬱そうに呟く。
由佳里「でも、夏だから暑いのは当たり前ですよ」
まりや「そのポジティブシンキングが羨ましいよ。由佳里…」
奏「でも、奏も夏はあまり得意ではないので、
早く秋になって欲しいなってちょっと思っちゃうのですよ」
瑞穂「ふふっ、奏ちゃんったら。
それだと今度は冬になったら早く春が来ないかな…なんて思ってたりして」
奏「はわわ。お姉さま、どうしてお分かりになるのですか?
奏、冬もあまり得意ではないのですよ〜」
瑞穂「あらあら。それは大変ね(笑)」
由佳里「あはははっ(笑)」

まりや「でもさ〜冬は服を着れば寒くないけど、夏は服を脱ごうにも限度があるじゃない」
由佳里「まりやお姉さま、限度いっぱいまで脱いでるときありますしね」
瑞穂「そうなの?」
由佳里「はい。この前なんかお姉さまの部屋に行ったときに…」
まりや「由佳里!言わんでいい」
由佳里「え〜」
まりや「『え〜』じゃない。あたしを恥晒しにして楽しいのかこのっ、このっ!」
 由佳里ちゃんをくすぐり始めるまりや。
由佳里「ごっ、ごめんなさい!もう言いま・あひゃははははは(泣笑)」

奏「まりやお姉さま、どうだったんでしょうか。気になるのですよ」
瑞穂「大体想像はつくけれど…ね」
奏「お姉さま、お分かりになるのですか?」
瑞穂「奏ちゃんは聞かないほうがいいわ」
 多分裸に近い格好だったのだろう。
 一応男の僕も寮に居るんだから、多少気を使って欲しい…。
 …あ、でも僕の方がイレギュラーなんだから、
 僕の方が気にしないようにしないといけないのか。
 例え皆の裸を目の前にしたとしても女を通さないと…って、何を想像してるんだ僕は!
奏「お姉さま、どうかなさったのですか?顔が赤くなっていらっしゃるのですよ」
瑞穂「いっいえ、何でもないのよ?」
奏「?」
 慌てて取り繕う。
 危ない危ない…。僕のバカ…。 

   ――――――

 店を出て20分程度。見慣れたアーケードまで帰ってきた。
由佳里「お姉さま」
 由佳里ちゃんの方に振り向く。
まりや「ん?」
瑞穂「何かしら。あ、ごめんなさい、まりやの方?」
由佳里「いえ、その両方で。今から私と奏ちゃんでスーパーに寄って行こうと思うんです」
瑞穂「そうなの。なら一緒に寄っていくわ」
由佳里「あ、いえ、いいんです。今日は色々とお世話して頂いたので、今晩はそのお礼をしようと思って」
瑞穂「今日は日頃のお礼だったのだから、気にしなくていいのよ」
奏「お姉さま。奏はお姉さまに普段からお世話になっていますから、
それを返さないと罰が当たってしまうのですよ」
瑞穂「奏ちゃん…。そう、じゃあお願いしようかしら」
奏「はいなのです」
由佳里「はい。今日は頑張って料理します」
 嬉しそうに微笑む奏ちゃんと、身体の前で"ぐっ"と拳を握って意気込む由佳里ちゃん。
瑞穂「じゃあ、期待してるわ」
由佳里「あ…えっと、期待されると…緊張するって言うか…」
 途端に由佳里ちゃんの意気込みが崩れた。
まりや「こらこら、どっちなんだ、由佳里」
由佳里「あぅ…」
瑞穂「ふふふっ」

瑞穂「こういうのも嬉しいね」
 妹二人と別れ、帰路に着きながら思わずくすくすと笑う。
まりや「嬉しいっていうか、くすぐったい」
瑞穂「貢献されるようなことをしてないからだったりして」
まりや「それはないでしょ、瑞穂ちゃん…」
 普段は由佳里ちゃんを苛めてるイメージしか無いしね。

 学園の近くまで帰ってきた。まりやはコンビニの前で立ち止まると、
まりや「あ、そうだ。ちょっと待ってて」
 と言い残し、中へと入っていった。
 僕は特に買うもの無かったので、手持ち無沙汰にコンビニの前で待っていた。
 しばらくして、手荷物にビニール袋を増やしたまりやが戻って来る。
まりや「ただいま。行こ」
瑞穂「うん」

瑞穂「何買ったの?」
まりや「えとね…」
男「こんちゃ〜」
 ビニール袋の中身を確認しようとした直前、後ろから声を掛けられた。
瑞穂「はい?」
 振り向くと、男が二人。年は同じか少し上。
 今風の格好…かどうかは分からないが、普通の男たちだ。
男「お二人さんどこいくの?もしかして、今帰るとこ?」
 これは…もしかして。
瑞穂「え…と…」
男「飯食いに行かない?今すっげぇ腹減ってんだけどさ〜」
男「コイツと飯行くことになってたんだけど、ヤロー二人とかどう考えても寂しいじゃん。
どうせなら可愛い娘と一緒に飯食いたいって思ってるんだけど、どう?」
 『ナンパ』か…。
まりや「門限があるから早く帰らないといけないんだ。悪いけど付き合えないわ」
 スパっと言い放つと、パタパタと手を振り歩き出すまりや。
瑞穂「ご、ごめんなさい」
 僕は慌ててまりやを追いかける。
 うう、かっこいい。
 こういうときは僕が何とかしないといけないのに…情けない。

男「へぇ〜、門限とかあるんだ。もしかしてお嬢様?すっげ〜可愛いもんね二人とも」
 すぐに男が追いかけ、僕たちと平行に歩き始めた。
 拒否されることも想定しているのか、男たちはさほど慌てている様子も無い。
男「門限って6時くらい?」
瑞穂「はい、そのくらいです…」
 小声ながらも何とか勇気を振り絞って嘘を吐く僕。
 情けない…。
男「へぇ、結構厳しいんだね」
男「あ、もしかして泉女の子?」
瑞穂「あの…その…」
男「照れるとこすっごい可愛いね君」
 ストレートな言葉に思わず赤面してしまう。
 …OTL

 その後もしばらく歩くが、男たちは相変わらず僕らに付いたまま色々な話題を振りまいてくる。
まりや「はぁ…」
 まりやが重い溜息を吐く。大分キテるようだ。
 まりやはずっと男たちを無視しているが、僕に至っては男たちの圧力に負け、
 少しだけど言葉を返してしまっていた。
 多分、それが相手に付け入る隙を与えてしまっているのかもしれない。
 本当に情けない…何をやっているんだ僕は…!

瑞穂「まりや」
 僕はまりやにそっと小声を掛け、背中を押して曲がり角へと誘導する。
 まりやが僕の目をちらりと見た。僕はこくっと軽く頷いてみせる。
男「こっちが家?」
 僕らは横に並んで曲がり角を曲がった。更にもう一つ曲がり角を曲がる。
 男たちが僕らを追って二つ目の曲がり角を曲がった瞬間、
 僕は振り向いて距離の近かった男の膝裏に足を引っ掛け、膝を折り曲げさせると、
男「おわ」
 男がバランスを崩した瞬間、もう一人の男の方へと突き飛ばす。
男「だっ!」
男「うわ、なんっ!」
 もう一人の男も倒れてきた男に巻き込まれて尻餅をついた。
 直後、僕は拳を軽く握り、
瑞穂「はぁぁぁあっ!!」
 裂帛の気合と共に地面を思いっきり踏み込み、腰を回して体重を乗せた正拳突きを放った。
男「ひっ」
男「な…」
 拳は倒れた男の顔のすぐ横を通り抜け、後ろの男の目の前で止まる。
 僕は拳を放った体勢のまま、
瑞穂「もうこれ以上ついて来ないで」
 と男たちを一人ずつ、じっと見つめた。
 そして構えを解くと、
瑞穂「行こう」
 とまりやを促した。
まりや「うん」
 まりやは楽しそうな笑みを浮かべると、
まりや「やるじゃん」
 と僕の肩をポンと叩いた。
 角を曲がる瞬間に後ろを振り向いたが、男たちは呆気に取られたままのようだった。
 これでもう大丈夫かな。

 路地を抜け、予定の帰宅ルートとは少し違う道を歩く。
まりや「路地に連れて行くし、ボコボコにしちゃうのかと思った」
瑞穂「そういう訳にもいかないよ。ただその…、ナンパしてただけなんだから。
流石に無理やり引っ張ったりとか乱暴なことされたら手荒な手段取るかもしれないけど」
まりや「でも、普通にナンパされるとはね」
瑞穂「まりやが居たからだよ」
まりや「いやいやいや。じゃあ瑞穂ちゃん、外出したとき一度もナンパされたことないの?」
瑞穂「そりゃあ…あるけど…」
 確かに外歩いてると結構ナンパされるんだよね…。
まりや「だろうね。流石は歴代最多得票数」
瑞穂「勘弁してよまりや…。僕もショックなんだから」
まりや「あははっ。でも、さっきの瑞穂ちゃんはかっこよかったよ」
瑞穂「そんなことないよ…。まりやみたいに突っぱねたり無視できなかったし…」
まりや「まぁ、最初の方は何やってんのよ!って思ったけどさ。
でもバシっと撃退してくれたときはやっぱかっこよかった」
瑞穂「そうかな…」
まりや「たまにはこういうかっこいいところ見せてくれると嬉しいかな。
最近瑞穂ちゃんが"オトコノコ(小声)"、ってことよく忘れてるし」
瑞穂「まりやだけは覚えておいてくれないと困るよ…」
 最近紫苑さんや緋紗子先生、僕が男だっていうこと忘れてるみたいだし…。
 それはそれで都合はいいかもしれないんだけど。
 でも、僕にも男のプライドみたいなものが…。
まりや「プライドとか捨てたほうが、精神衛生上良いと思うよ?」
瑞穂「人の心読まないでくれる、まりや…」
 っていうかヒドイ…。OTL

瑞穂「それにしても今日のまりや大暴れだったね」
まりや「大暴れってどういう意味よ」
瑞穂「言葉通りだよ。お昼のテンション高かったし」
まりや「ん〜…まぁ正直さ…今まで皆で出かけることってほとんど無かったじゃない」
瑞穂「そうだね」
まりや「だから、皆で出かけるのが嬉しかったんだよね」
瑞穂「それで空回りしてたと」
まりや「それは無いんじゃない?瑞穂ちゃん」
瑞穂「あはは(笑)…でも、楽しかったよ」
まりや「うん」
 本当に楽しかった。たまには皆でこういう風に遊びに出掛けるのもいいかもしれない。
まりや「今度は皆でプールにでも行こっか」
瑞穂「止めてよまりや…。あ、そういえばさっき何を買ってたの?」
まりや「あ、そうだったね。これだよ」
 ゴソゴソとビニール袋から薄い板状のものを取り出す。
瑞穂「…花火?」
まりや「そ。後で皆でやろうと思ってね」
瑞穂「学園内で?」
まりや「まぁ近場で出来れば一番いいかもね」
瑞穂「やっていいのかな」
まりや「ちゃんと火の注意と後片付けすれば大丈夫でしょ。それにもう買っちゃったし」
瑞穂「やっちゃダメって言ってもやりそうだね」
まりや「トーゼン」
瑞穂「さすがまりや」
 思わず吹き出してしまう。
まりや「それ全然誉めてないよね」

 寮が見えてきた。ポケットから扉の鍵を取り出す。
まりや「麦茶が飲みたい」
瑞穂「僕も喉が渇いたよ」

 今日の夜は花火か。
 明日はどうなるかまだ分からないけど、とりあえず暑い日はまだまだ続きそうだ。


− fin −

===== * ===== * ===== * ===== * ===== * ===== * =====


(#以下、あとがき)

終わりました…。やっと終わりました…。
え〜、色々と反省はしてますが、後悔はしてな(ry  …(_ _;;)

最初の5話くらいは各話1時間程度で書けたんですけど、それ以降は中々内容が出てこず、辛かったです。
書き込んだ瞬間に、あっしまった!とか、見返してこりゃねぇだろってことも。
これもひとえに私のおとボク愛が足りなかったことを示唆しているのかっ…!

    ざわ・・・
               ざわ・・・

そういえばもうすぐアリスマ出ますね。 Qooでした! ヽ(´∀`)ノ

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