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『BANK ROBBERY』 by 「9-97」氏

接触編
発動編
酒と泪と男と女と男女
終焉の銀河へ
(おまけ)

 


   接触編



鏑木瑞穂は鏑木系列の銀行にいた
自社の新進デザイナー「御門まりや」の新作ファッションショーの資金調達のために
社長室長の厳島貴子と秘書の菅原君枝も同席している

行内の一室で融資の話を終え、退室すると父慶行と偶然会った
慶行も少し驚いていたので完全に偶然のようだ
少し世間話をしてエントランスに戻ると事態は急展開した

「全員両手を挙げておとなしくしてろ!!」
瑞穂は事態を整理してみる
(え〜と、今叫んだ男の人の手には拳銃があって…バッグに金を詰めろって…)
(これは世に言う…)「銀行強盗?」
最後の一言が声にでてしまった、慶行はそれを聞きとがめて
「あの程度持って行かれても鏑木はビクともせんわい、手を出して撃たれてもつまらんし放っておけ」

強盗は瑞穂達に向かってきた、慶行が瑞穂を自分の方に引き寄せる
瑞穂の真後ろに行員用の通用口があり、そこから逃げるつもりなのだ
ここで貴子が思わぬ行動にでた
強盗の足を引っ掛け転ばせたのだ、そして突然怒り出す
「あっあなたはバカですか!?なんでここにあるものの中で最も価値あるものを狙わないんですか!!?」


「なにしやがる!コラァ!!」
強盗が起き上がりざま叫ぶ、当然だ
ところが貴子は少しも怯まず
「だから!なぜお金よりも価値のあるものを持っていかないんですか!」
「そんなものがここにあるってのかよ!」
「あるじゃないですか!ほら!」
貴子は強盗の頭をつかんで瑞穂のほうへ向けた
「おい…まさかこいつがそうだってんじゃないだろうな…」
瑞穂は事態の展開についてゆけず唖然とするばかりだ
「瑞穂さん以上に価値のあるものがこの世にあるものですか!」

瑞穂は隣にいる慶行の気配が変わったことに気づいた
「父様?」
恐る恐る慶行の方に振り返る…父慶行は泣いていた
「おおっ!貴子君の言うとおりだぞ!強盗犯!瑞穂以上のものなどこの世に存在しない!」
「総帥の仰るとおりです!瑞穂お姉さま以上の存在などこの世界にあってはならないんです!」
ついに君枝まで暴走した
「なんでそうなるのー!」
「お前らアホかー!」
瑞穂と強盗が同時に叫んだときだった
「強盗犯に告げる!抵抗はあきらめておとなしくでてきなさい!」


瑞穂と強盗犯が周りを見ると客はおろか行員の姿もなくなっていた
どうやら貴子たちが暴走している隙に避難したようだ
そして避難した行員が警察を呼んだのだろう
外を見れば銀行は警察官に囲まれていた
「…どうすりゃいいんだよ……」
「あら、簡単ではありませんか、身代金を要求すればよいのです」
落ち込む強盗に貴子が声をかける

瑞穂は強盗が気の毒になってしまい
「…とりあえず様子を見ましょう…警察もすぐには踏み込まないでしょうから」
と無難な提案をしたが
「ではその間、瑞穂お姉さまの素晴らしさをじっくりと教えて差し上げましょう」
君枝のこの言葉で再び貴子と慶行が暴走した
強盗を正座させ得々と瑞穂について語りだした
強盗はこの二人のオーラに抵抗できず、ただ黙って聞いているだけだ
瑞穂は本格的にこの強盗に同情してしまった
(ここにこなければ、こんな目に合わなかったろうに)

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   発動編



貴子、慶行、君枝の強盗への説教(?)は今だ続いている
瑞穂はただ見ているしかできない、下手に手を出せばどんな目にあうかわからないからだ
ふと、窓の外へ目をやると、さらなる災厄が訪れたことを知った
しかも仲間を引き連れて

「やっほー瑞穂ちゃ〜ん!面白いことやってるね〜あたしもまぜて♪」
「まりやっ!なんでここにいるの!?って、きちゃだめじゃない!」
「いやいや、お疲れだろうと思って差し入れを持ってきたのよ」
「由佳里ちゃんに奏ちゃん…紫苑さんまで……」
「お久しぶりですお姉さまっ!由佳里の手料理もってきましたよ」
「お久しぶりなのですよ〜お姉さま〜」
「…二人とも久しぶり…いいかげんお姉さまは止めてくれないかな?」
「瑞穂さん…本当にあなたはひどい人です!こんな面白いことに呼んでくれないなんて!」
「あの…紫苑さん?銀行強盗ですよ?普通は呼ばないですよ?」
「ですが、銀行強盗なんて一生経験できないかもしれませんわ」
この発言に瑞穂は言い返せなかった


「で、なんでこーなってるの?」
まりやが当事者たちに聞いた、現在時刻は午後6時20分、犯行開始から実に3時間半が経過している
由佳里の作ってきたハンバーグ定食を強盗も含め全員で食べながら、瑞穂と強盗は今までの経緯をかいつまんで話した
「要するに、いろいろあってお金が必要になった強盗さんは、瑞穂さんに見向きもしなかったから貴子さんたちに怒られていたんですのね」
紫苑がさらに要約した
「そりゃ強盗が悪い!」
「そうですね、瑞穂お姉さまを眼中に入れないなんて強盗さんが悪いです」

警察の許可を得て銀行内に入りまりやたち4人が目にしたのは、正座させられている銀行強盗の姿だった
強盗を正座させ瑞穂の素晴らしさを語る慶行、貴子、君枝を見た後続4人は、一体なにが起こっているのか理解できなかった


「なにがあったのか知らんが…ワシでよければいろいろ聞こうじゃないか」
慶行がしょんぼりしている強盗の隣に座り缶ビールを差し出す
「ちょっ、総帥?なんでビールなんか持ってるんですか?」
すかさず貴子がツッコミを入れる
「なんでって、あたしが持ってきたんだもん」
「またあなたですか!まりやさん!」
「しまった〜!」
「どうしたんですか?まりやさん」
「瑞穂ちゃんの服、置いてきちゃった〜」
「んん〜女物の服ならここのロッカールームに銀行の制服があるだろ?」
「そっか、この際女装ならなんでもいいや」
「まってよまりや!それじゃ僕ただの変態じゃないか!」
「ええい!何をいまさら!瑞穂ちゃんが着れば女子行員も喜ぶわよ!」

瑞穂が着た服はごくありふれたフォーマルなスーツ、ただちょっとスカートが短かったが
「さすがお姉さま〜何を着ても似合うのですよ〜」
「会長〜私、女のプライドズタズタです…」
「私もですよ…君枝さん…」
「ささ、瑞穂、皆さんにお酌して周りなさい」
慶行に言われるまま、瑞穂は全員にお酌をする、ついに強盗が
「…俺、間違っていました! この地球上に瑞穂さん以上のものなんて存在しないんです!!!」
「おおっわかってくれたか友よ!」
ガシッと男二人が抱き合う、強盗の宣言を聞き抱き合う姿を見て
恵泉メンバーが拍手を送る
「…僕にはわからないよ………」
瑞穂のつぶやきは瑞穂にしか聞こえなかった

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   酒と泪と男と女と男女



「聞いてください…俺…俺…」
「うむ、若いうちは誰でも…」
いい感じにアルコールがはいった強盗は鏑木慶行の人生相談室に入ったようだ
相談を受ける側の慶行も相当にアルコールを摂取しているようだが

「奏なんて…奏なんて…いまだに小学生に間違えられるのですよ〜」
「私だって…ハンバーグとかネタキャラだとか…エロの君だとか散々言われて、ひどい人なんて私の存在自体忘れちゃってるし…」
「私だっておさげにメガネのマニア装備なのに攻略対象じゃないし…」
「僕だって全然男に見てもらえないし…会社じゃレズカップルとか思われてるし…せめて声が郷里大輔とか玄田哲章だったら少しは違うのかなとか…」

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   終焉の銀河へ



午後9時、アルコール飲料の力により、全員の思考回路が麻痺状態になった
そんな中、一時的に思考回路が復活したのか十条紫苑が、ふらふらとおぼつかない足取りでなにやら探し物を始めた
戻ってきたとき手には拡声器が握られていた
今度は窓を開け
「警察に告げる!こちらの要求は身代金!
金額は1兆円である!
当方は
1.鏑木財閥総帥鏑木慶行
2.鏑木慶行のご子息であり鏑木テクスタイル社長でもある鏑木瑞穂
3.新進デザイナー御門まりや
4.孤児院院長周防院奏
5.料理研究家上岡由佳里
6.一般人の女性一名
以上6名を人質として確保している
繰り返す当方の要求である身代金の金額は
一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇円である!!」
言うだけ言うと何事もなかったかのように窓を閉め酒盛りに戻った


1102−周防院奏 撃沈 以降十条紫苑のヌイグルミ化
日付が変わり
0021−上岡由佳里 撃沈 以降御門まりやのおもちゃ化
0031−銀行強盗 撃沈
0032−菅原君枝 撃沈
0111−厳島貴子、鏑木瑞穂 撃沈
0135−鏑木慶行 撃沈
0146−御門まりや 撃沈
0230−生き残った十条紫苑、外出


同日1132−鏑木瑞穂起床

そこは病院のベッドの上だった
頭に激痛が走る、二日酔いのようだ
隣のベッドには御門まりやが寝ている
周りを見ると奏と由佳里も寝ている
とりあえず昨日の銀行強盗の顛末がどうなったか確認するために、備え付けのテレビのスイッチを入れる

『はい、プロの強盗ではなくわけありと見た鏑木総帥が説得にあたったんです
幸い御門まりやさんがアルコール飲料を差し入れて下さいまして…』
『ええ、ちゃんとわかってくれましたわ…「僕が間違っていました」と…』

テレビの中継により事の顛末を知ることができた
宴会中、次々と撃沈していく中、紫苑のみが生き残り、警察に保護(?)され、残りのメンバーは救急車で病院に運ばれたこと
銀行強盗は警察病院に入っていること
行内にいたメンバーに1兆円もの身代金がかけられていたこと
銀行強盗は慶行の説得で改心したことになっていること
…そして紫苑は常人なら急性アルコール中毒で死亡するであろう量を飲んでも、二日酔いすら起こさずに、インタビューに答えていること

1230−病室内のメンバー起床、全員頭痛を訴える

翌日、テレビで流れた鏑木を褒めちぎる紫苑のコメントにより、鏑木グループの株価が上昇した
銀行強盗は服役後、慶行に雇われたとか雇われないとか

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   (おまけ)



昼のワイドショーだが銀行の外で起こっていたことを伝えてくれる

まず、まりやたちが警察の許可をもらったとはいえ、銀行から出てこないことで相当警察に批判がきたようだ
さらに紫苑が警察に身代金の額を伝えたときパニックが起こったそうだ
いくら重要人物が捕らわれているとはいえ常識はずれの額だ
映画でさえ100億円がいいところなのに
結果、鏑木財閥の幹部もパニックに陥り、深夜にもかかわらず金策に頭を抱え売却できる資産のリストアップにかかっていたらしい

その上差し入れの中に大量の(宵の頃から深夜に至るまで酒盛りができる量)アルコールが含まれていたため、ここでも警察に批判がきた
むろんこれは、御門まりやが勝手に持ち込んだものである

強盗が使っていた拳銃もモデルガンであることが判明した
ちなみに行内ではまりやが見抜いていた
「デザートイーグルじゃん!これモデルガンだけど1キロはあるんだよね」
「アメリカ帰りは伊達じゃない!」
だそうだ

2000−ワイドショーを見終わった
鏑木慶行、鏑木瑞穂、御門まりや、厳島貴子、菅原君枝、周防院奏、上岡由佳里 以上7名、無事退院
病院ロビーにはインタビューから解放された十条紫苑が入院組みを待っていた
「とっても面白い一日でしたわ♪」

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#今日、銀行に行ったら訓練やってたんで書いてみました
#もっと短くまとめるつもりだったのに長くなっちゃった
#なんてゆうかキャラが暴走しちゃう、SSって難しいんですね

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